宮本卯之助商店

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日本の祭りの伝統を、後世に伝え続けていくために

太鼓が力強く打ち鳴らされ、神輿が街中を練り歩き、掛け声やお囃子が賑やかに響き渡る。そんな祭りの風景は、活気あふれる季節の風物詩だ。日本人が代々受け継いできた祭りや伝統芸能を支えてきたのが、文久元年(1861年)創業の宮本卯之助商店。美しく堅牢な神輿や深い音色を生み出す太鼓を始め、能楽雅楽器や祭礼具などの製作から販売・修理・レンタルまで行っている。

「人々をつなげる力をもつ祭りや世界に誇れる伝統芸能は、日本を特徴づける固有の文化。グローバル化の進む現代において、ますます果たす役割は大きくなっています」
 だからこそ、この文化を守り育て、後世に伝えていく仕事を誇りに思うと語る宮本芳彦社長。製品づくりに携わるのは、最高品質を追求する技術集団の職人たちだ。

太鼓づくりは最良の素材を求めることから始まる。長胴太鼓になるのは、樹齢100年以上の国産材。歪みのないように3〜5年かけてじっくり乾燥させたうえで、手鉋でていねいに仕上げる。皮は独自の天然加工を施したもの。木槌で伸ばしつつ、音を確かめながら細やかに調整して胴に張っていくことで、深みのある優美な音が生まれる。
神輿づくりは、20種にも及ぶ専門の職人技の結晶だ。神輿の骨格をつくる木地師、屋根や台輪に漆塗を施す塗師、随所を煌びやかに彩る錺金具(かざりかなぐ)を担当する錺師らに加え、全体を統括する神輿師が一体となって丹念に製作を行う。完成した神輿に付けられる「宮本重義」の作人札は、すべての職人が丹精込めた仕事の証とされる。

祭りの文化を広く後世に伝えていくために、近年は新たな取り組みにも積極的だ。和太鼓スクール「HIBIKUS」、海外向けオンライン和太鼓レッスン「kaDON」など、太鼓の魅力を広く発信するプロジェクトはそのひとつ。また、“東京発”へのこだわりから生まれたのが「森を創る太鼓」。東京産の杉材を使った太鼓を東京の職人がつくり、その過程を広く発信することで、環境とものづくり双方への関心を高めてもらうというプロジェクトだ。2021年3月にこの太鼓を使った和楽器ライブも行われ、評判を呼んだ。祭りや伝統芸能文化の裾野は、確実に広がりつつある。

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