太鼓の魅力を、モノづくりとコトづくりの双方で発信。太鼓の魅力を、モノづくりとコトづくりの双方で発信。

太鼓の魅力を、モノづくりとコトづくりの双方で発信。

 「太鼓という日本の伝統文化を伝え続けていくためには、モノづくりだけでなく、コトづくりを行っていくことが大切だと思っています」
 こう語るのは、太鼓を始め神輿や能楽、雅楽器などの製作を手掛ける老舗・宮本卯之助商店の宮本芳彦社長。モノづくりとコトづくりを掛け合わせたプロジェクト「森をつくる太鼓」は、その思いを具現化したものだ。日本人が自然と共生する中で育まれ太鼓の原点に立ち返り、東京都檜原村の森の杉を使って太鼓を製作。2022年5月には、その森の中でコンサートを開催した。

 当日の演奏は木の伐採を間近に見ることから始まった。「木がひとつの生を終え、楽器へと転生し、生まれた場所に戻ってきて音を奏でるという一連の流れを、実体験として感じてほしかった」と語る宮本さん。太鼓の音のひとつひとつに森の木々が呼応するような、深く神々しい響きに、参加者たちも聞き入っていたという。コンサートのほかにも、森についての話を聞きながらのウォーキング、スプーンづくりや太鼓を鳴らすワークショップを開催。こうした複合的な体験が、自然と人間の営みを見つめ直すきっかけとなればという願いを込めた。

太鼓の魅力を、モノづくりとコトづくりの双方で発信。

 コトづくりの一環として、憧れをつくることが大事だと、さまざまな舞台での公演も開催している。そのひとつ「和楽奏伝」は、和太鼓を始め三味線、笛、箏など、多彩な和楽器奏者が共演するプロジェクトだ。2021年には、京都の老舗装束店と協同し、和楽器と装束、コンテンポラリーダンスを融合した舞台を渋谷・オーチャードホールで開催し好評を得た。2022年9月には、新たな舞台を浅草公会堂で開催予定。「森をつくる太鼓」を多く使い、観客が参加できるワークショップも開くという。
 「森のコンサートでは、子どもたちが自由に楽しむ様子が印象的でした。今後は親子向けプログラムなど、次世代にもっと関心をもってもらえる企画を増やしていきたい。都市のホールでも、皆が参加できるようにするのもいいですね。舞台と客席が一体になって楽しめる場がつくれたら、伝統芸能も生きたものとして捉えてもらえるのではないかと思います」