「つながり」をデザインする太鼓「つながり」をデザインする太鼓

「つながり」をデザインする太鼓

「つながり」をデザインする太鼓

江戸後期の創業以来、150年以上の長きにわたり、日本の祭と伝統芸能とともに歩みを進めてきた「宮本卯之助商店」。

大正期には、大正天皇御大葬用楽器の一式を謹製。

昭和期には、東京五輪開催時に高さ8メートルもある火焔太鼓一式を提供。

平成期には、社を挙げて、浅草神社の例大祭でお馴染みの「三社神輿」修復に尽力――。

代表取締役社長の宮本芳彦氏は太鼓の可能性について、「太鼓はある種の『メディア』であり、言語が違ってもコミュニケーションできるという意味では『翻訳機』とも言えます。人と自然、人と人との『つながり』をデザインする力が太鼓にはあります」と語る。

実際、コロナ禍が収束しつつあるいま、海外の方と太鼓を通した交流も再開。浅草、横浜、博多で運営している太鼓教室の仲間が一同に会した折は、初対面であったとしても、「太鼓」があることですぐに打ち解け、共感の輪が広がっていくという。

「つながり」をデザインする太鼓
「つながり」をデザインする太鼓

2022年からは、日本人が古より自然との共生を願い打ち鳴らしてきた「太鼓」の原点に立ち返り、自然の循環を意識したものづくりを目指す「森をつくる太鼓」プロジェクトに取り組んでいる。「東京のスギ」にフォーカスした第一弾に続き、プロジェクト第二弾では「太鼓になれなかった太鼓の胴」のリプロダクトに挑戦。

「つながり」をデザインする太鼓

昨年、舘鼻則孝氏とコラボレーションする際、製品化されることなく、工房に眠っていた太鼓を提供したのは、そうした思いがあってのことだろう。

今年のコラボレーション作品は、昨年と同じく、4.5寸の玩具太鼓を連結し、雷神の持つ雷鼓を表現したものと、彩色を施した長胴太鼓。

形状は昨年のものと同じだが、いくつか違いがある。

昨年、アクリル絵の具を使用したのに対し、今年は樹脂比率の高いカシュー塗料を選択。独特の光沢に加え、ぬくもりが増している。今回の展示では実際に叩かれることはないが、芸術作品でありながらも実用性を意識して制作されたという。

そのため、昨年の長胴太鼓の作品は、乾燥させる工程で歪みや割れが生じたことで製品とならなかった太鼓を使用したが、今年は叩くことを想定し、製品化と同じ工程をたどったものを用いている。その違いは見た目にも表れており、昨年は鉋で仕上げる前の荒々しい表情が残っていたが、今年の長胴太鼓は美しい曲線を描いており、いまにも音が鳴りそうだ。

2年目となる舘鼻氏とのコラボレーションについて、宮本氏は次のように語る。

「コラボレーションを通して、デザインというものの重要性を改めて実感することができました。また、創意工夫を楽しむことで思考がほぐれていく感覚もありましたし、今後、新たなチャレンジをする際のアプローチの幅が広がったように感じています」

「つながり」をデザインする太鼓

展示されたのは、「得仁堂」。

その名前は、司馬遷が著した『史記』の「伯夷列伝」にも登場する伯夷、叔斉に対して、孔子が「求仁得仁」(仁を求めて仁を得たり)と評したことに由来する。関東大震災、そして先の大戦でも焼失することなく、その姿を留めている。

雷鳴を神仏の来臨に擬えて、雷神の持つ雷鼓を表した作品にふさわしく、限られた自然光が降り注ぐ、おごそかな雰囲気が漂う場所であり、その質感、色彩の鮮やかさがそのまま感じられるような展示となった。

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Photo by GION

Special Movie

現代美術家 舘鼻則孝 × 和太鼓 宮本卯之助商店


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