EXHIBITION
展覧会紹介
江戸東京の伝統に根差した技術や産品などを新しい視点から磨き上げ、世界へと発信していく「江戸東京きらりプロジェクト」は、現代アートの分野で国内外問わず幅広く活躍する現代美術家・舘鼻則孝氏を展覧会ディレクターとして招聘し、「江戸東京リシンク展 –旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来–」を本スペシャルサイトにて公開しています。本展覧会では、東京都の伝統産業事業者を舘鼻則孝氏のコラボレーターとして迎え、「日本古来の伝統文化をみなおし、未来に向けて何を表現すべきか」という舘鼻則孝氏の創出プロセスである「Rethink(リシンク)」を起点として、歴史ある伝統産業の価値や魅力を新たなかたちで提案します。前年より継続して開催される本展覧会は、新たに制作されたアート作品や伝統産業事業者が保有する貴重な歴史的資料を国の重要文化財である旧岩崎邸庭園で記録し公開しています。
オンライン開催概要
- 展覧会名
- 江戸東京リシンク展 –旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来–
- 主 催
- 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
- 共 催
- 公益財団法人東京都公園協会
重要文化財 旧岩崎邸庭園
旧岩崎邸庭園は1896年(明治29年)に岩崎彌太郎の長男で三菱第3代社長の久彌の本邸として造てられました。往時は約1万5,000坪の敷地に、20棟もの建物が並んでいました。現在は3分の1の敷地となり、現存するのは洋館・撞球室・和館の3棟です。木造2階建・地下室付きの洋館は、鹿鳴館の建築家として有名な英国人ジョサイア・コンドルの設計で近代日本住宅を代表する西洋木造建築です。館内の随所に見事なジャコビアン様式の装飾が施されていて、同時期に多く建てられた西洋建築にはない繊細なデザインが、往事のままの雰囲気を漂わせています。別棟として建つコンドル設計の撞球室(ビリヤード場)は当時の日本では非常に珍しいスイスの山小屋風の木造建築で、洋館から地下道でつながっています。洋館と結合された書院造りの和館は当時の名棟梁大河喜十郎の手によるものと言われています。床の間や襖には、明治を代表する日本画家・橋本雅邦が下絵を描いたと伝えられる障壁画などが残っています。現存する大広間を中心に巧緻を極めた当時の純和風建築をかいま見ることができます。大名庭園を一部踏襲する広大な庭は、建築様式と同時に和洋併置式とされ、「芝庭」をもつ近代庭園の初期の形を残しています。
展覧会ディレクター
現代美術家 舘鼻則孝
江戸東京きらりプロジェクト推進委員
1985年、東京都生まれ。東京藝術大学工芸科染織専攻卒。卒業制作として発表したヒールレスシューズは、花魁の高下駄から着想を得た作品として、レディー・ガガが愛用していることでも知られている。現在は現代美術家として、国内外の展覧会へ参加する他、伝統工芸士との創作活動にも精力的に取り組んでいる。作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館などに永久収蔵されている。
ディレクターズメッセージ
江戸東京きらりプロジェクトのコンセプトである“Old meets New”。
東京には、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和の時代にまで続く、数多くの「老舗」が存在しています。そして、そこにはさまざまな技、文化、伝統が息づいている。そうした東京の魅力を国内外に伝えたいという思いからスタートしたのが本プロジェクトになります。今回、その活動の一環として開催される「江戸東京リシンク展」に、私は、作家としてだけでなく、展覧会ディレクターとしても参画しています。私はこれまで“Rethink”という言葉を冠した展覧会をいくつか開催してきましたが、本プロジェクトのコンセプトである“Old meets New”と“Rethink”という概念は多くの共通点を有していると考えています。“Rethink”が意味するところを簡略化して言うなら、途切れることなく続く日本の伝統、あるいは文化を、現代においてそのまま再現するのではなく、現代的な意味を加えて表現するということです。そのため、私の作品はすべて、日本のこれまでの歴史、文化があってこそ、成立しているとも言えます。その点において、“Old meets New”と“Rethink”は同義であり、だからこそ、これまで数多くの伝統工芸、伝統芸能とコラボレーションする形で、過去と現在をつなぐ活動をしてきたのです。時代は変わっても変わるべきでないもの、時代が変わるからこそ変わるべきものを見極め、伝統を次の100年に残していくために、今、私たちが何をなすべきか。伝統をどう現代的な意味づけをして打ち出していくか。今回の展覧会は、東京の魅力を伝える場であるとともに、私たち自身がリシンクするための機会でもあるのです。
スペシャルムービー
日本古来の伝統文化をみなおし、未来に向けて何を表現すべきか
展覧会ディレクターを務める舘鼻則孝氏によるコラボレーション作品の解説。作家として舘鼻則孝氏が、いつも自問している言葉の裏には“Rethink”という基本的な考えがあります。それは“Old meets New”と同様に、「伝統と革新が交錯する」ことを意味する言葉でもあり、本展覧会においても、最も大切な構成要素となっています。
ユニークベニューにおける展覧会構成
展覧会における展示構成を考えるうえで重要なのは、その空間と展示物のリレーションです。午前と午後、また夕方では光の状況も全く異なり、それらの要素はこのような建築で展示をする際、非常に重要な判断材料となります。例えば、朝の光が美しいサンルームには「江戸切子 華硝」の作品を。また、「和太鼓 宮本卯之助商店」は、展示物の神輿に後光が差すように1階の婦人客室に展示。和館には、「東京くみひも 龍工房」の作品を展示し、建設当時に描かれた板絵と作品を掛け合わせるなど、空間と展示物の有する魅力がより一層際立つようにと決められていきます。