【江戸東京リシンク展】和太鼓 宮本卯之助商店「世阿弥の言葉と伝統の継承」【江戸東京リシンク展】和太鼓 宮本卯之助商店「世阿弥の言葉と伝統の継承」

【江戸東京リシンク展】和太鼓 宮本卯之助商店「世阿弥の言葉と伝統の継承」

カンカンカン――。
太鼓に張る皮を伸ばし、打ち下げていく木槌の音が工房全体に響き渡る。

宮本卯之助商店は、文久元年、西暦でいえば幕末期の1861年に「太鼓店」として創業されたが、その後、顧客の要望に従い、神輿、祭礼具なども手がけるようになった。

そのため、本社の工房には、太鼓の胴を手がける部門、胴に皮を張る部門、神輿の解体から組み立てを担う部門、製造・修理部門、漆を扱う部門、彫金部門など、多様な作業場が存在している。

職人は一通りの仕事を経験するのに少なくとも10年はかかるという。そこから自分の得意な分野を伸ばすために、さらに腕を磨いていくことになる。

【江戸東京リシンク展】和太鼓 宮本卯之助商店「世阿弥の言葉と伝統の継承」

日本人の祈り、自然に対する感謝を表現する場で打ち鳴らされてきた太鼓。
そうした太鼓の原点に立ち返るために宮本卯之助商店が今取り組んでいるのが、「森をつくる太鼓プロジェクト」だ。

東京の森で育った木材を、東京の職人の技で太鼓に仕上げる。そのプロセスの中で自然と共生する太鼓のあり方を模索するというのは、太鼓のルーツを遡る旅であると同時に、未来へ何をつなげていくかという未知への挑戦でもある。

代表の宮本芳彦氏は、「樹齢60年以上、高さ25メートルにもなる杉が倒れる音を聞いたとき、1つの命をいただいて、それを活かして太鼓にすることの責任の重さを改めて感じた」と語る。

【江戸東京リシンク展】和太鼓 宮本卯之助商店「世阿弥の言葉と伝統の継承」

昭和天皇御即位御大礼用楽器一式、浅草神社御本社神輿を手がけ、さらには歌舞伎座・国立能楽堂御用達となるなど、日本の伝統と技を継承し続けてきた宮本卯之助商店だが、宮本氏は意外にも次のように話す。

「あまり難しく考えすぎてもいけない。『衆人愛敬』という世阿弥の言葉があるように、大衆に愛されることは、伝統を継承するためには欠かせない要素です。ですから、古いものを守りながら、今の人に受け入れられる製法、素材に挑戦することも大切だと思っています」

今回の「江戸東京リシンク展」では、現代美術家の舘鼻則孝氏とのコラボレーションを予定している宮本卯之助商店。太鼓を使ったアート作品という新しい挑戦は、未来へ太鼓という伝統を残していく一歩となるに違いない。

【江戸東京リシンク展】和太鼓 宮本卯之助商店「世阿弥の言葉と伝統の継承」

Photo by Satomi Yamauchi

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、十分な感染対策を講じて取材を行なっております。


オンライン開催概要
【展覧会名】 江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
【開催期間】 2022年3月24日(木) 14:00 〜 3月31日(木)
※オンライン開催期間終了後もアーカイブとして同URLにて閲覧可能です。
【主  催】 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
【共  催】 公益財団法人東京都公園協会

【参加事業者】
小町紅 伊勢半本店、江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、江戸木目込人形 松崎人形、和太鼓 宮本卯之助商店、木目金 杢目金屋、東京くみひも 龍工房、金唐紙研究所(特別協力)


【江戸東京リシンク展】和太鼓 宮本卯之助商店「世阿弥の言葉と伝統の継承」