京源

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デザインの力で、家紋に今の空気を吹き込む

1910年に、着物の紋の形に糊をつける紋糊屋として、京橋で開業した「京源」。その後、着物に墨と筆で繊細な家紋を描き入れる職人、紋章上繪師として代々技術を受け継いできた。

日本の家紋は、もともとは公家文化から誕生した。やがて武士の世となって旗印となり、さらには平和な世の中が訪れると儀式に用いられるようになった。室町時代になると裃(かみしも)の衣装が生まれ、そこに家紋を直筆で墨描きするようになる。江戸時代になると家紋は苗字を持つことが許されなかった庶民も唯一持つことのできた存在証明として大切にされた。

「京源」の三代目波戸場承龍氏は、家紋を描く紋章上繪師として伝統の技を守りつつ、現在では商業デザインやアートの世界にまでその活躍の場を広げている。そのきっかけとなったのは、50歳になったタイミングで家紋を使った作品を作り始めたことだったと言う。

留袖や喪服の需要が減って紋入りの着物は冠婚葬祭でしか用いられなくなり、また貸衣装の普及から、着物に紋を入れること自体が人々の日常から遠ざかっていく。紋入れも手書きから印刷紋に変わっていく、そうした時代の変化を肌で感じた波戸場承龍氏は、「このままだと仕事をしていても楽しくない」と感じ、新しい仕事をしようと心に決める。

こうして生まれたのが、正円と直線を巧みに組み合わせて描き出す江戸の技に、デジタル技術を融合させた、新しい家紋の表現だった。その作風は「紋曼荼羅」と名付けられ、商業施設のロゴや服飾雑貨、商品パッケージなどに次々と採用されていく。一方で、波戸場氏は、これまでの概念を覆す家紋を使ったアート作品も手掛け、伝統を担う職人でありながらデザイナーとしても、その才能を開花していく。
「かっこいい形で伝統を残したい」と語る波戸場氏。その自由な発想とデザイン力は、今、国内外の人々を魅了している。

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