現代のスタイルにあった硝子製品を
ガラス問屋として創業から80年にわたって、業界の表裏を眺めてきた木本硝子。コストの安い海外生産品に押され、日本の硝子製品市場は年々縮小を続けている。数々の工場が姿を消し、職人の数も加速度的に減少しているいま、日本の硝子を愛するものとして、木本硝子は使命感に燃えている。日本伝統のカットグラスである江戸切子を始め、東京には素晴らしい硝子製品がたくさんあって、そして素晴らしい技術を持った職人がまだまだいる。この伝統や技術を守りながら、さらに進化させていく術を創造し、世に発信していくことが、職人と顧客をつなぐ問屋に課されたミッションだ。
木本硝子はそんな思いから、伝統的な技法を用いた、革新的なデザインの商品を数多くプロデュースしてきた。その商品群には、これまでは表現することが難しかった黒の江戸切子や、サンドブラスト加工を施したもの、人間工学に基づいた流線型のシェイプのものなど、伝統的な職人技を駆使しながら、斬新なルックスに仕上げたものが多い。それらは職人と第一線で活躍するデザイナーをつなげる木本硝子のプロデュース力によるものだ。
さらに木本硝子では、食事に合わせてお酒とグラスを変えるペアリングの提案を通して、東京の酒造メーカーと連携しながら、グラスとお酒の新しい楽しみ方を訴求するプロモーションを行っている。ワインやカクテルの文化では、お酒の味わいや飲み方によって、グラスのシェイプや大きさを変えて楽しむことは、昔から当然のように行われている。しかし、ワインと同じようにさまざまな風味や味わいがあるにも関わらず、日本酒の文化においては、これまでグラスの重要性にはあまり注目されてこなかった。芳醇な香りが特徴の日本酒には、ボウルの大きいグラスを。スッキリとした飲み口の日本酒には、スリムで背の高いグラスを。これまで慣れ親しんできた日本酒でも、グラスを変えただけでその印象は一変する。日本の食文化は、江戸硝子の進化によってさらにおもしろくなる。