革の魅力をさらに引き出す新型バックパック:土屋鞄製造所の新たな挑戦
2023.06.23
FASHION思わず触ってみたくなる革の柔らかな風合いと、美しい光沢感。土屋鞄製造所が6月に発表した新型のバックパックは、上質な革ならではのビジュアルも目を奪われる魅力の一つ。
「これから世界の人々に広く発信していく私たちの決意表明として、このバックパックを作りました。これまでの私たちの技術の集大成であると同時に、未来に向けた新しい取り組みにも挑戦した意欲作です」と話すのは、土屋鞄製造所販促企画部 部長の持丸加奈子さん。
1965年にランドセルから始まった土屋鞄製造所。ものづくりを続けてきてまもなく60周年を迎えようという今年、さらなる一歩を踏み出したいと、世界に向けて発信していくことを決意した。会社のロゴやブランドカラーを一新し、新作鞄を発表。中でも力を入れたのが、このバックパックだ。
「ものづくりにたずさわる私たちの使命であり、願いであるのは“時を超えて愛されるプロダクトを作ること”。そのために、創業以来ずっと大切にしているものがあります。それは“CRAFTMANSHIP”(=職人の細やかな技術と心配り)、“CREATIVITY”(=素材や機能、デザインの探求)、そして“TIMELESS”(=長く寄り添えるデザインと耐久性)。私たちは今回、それらを改めてアイデンティティに掲げ、その3つを体現する新作としてバックパックを作りました」
これまでの土屋鞄製造所のプロダクトと同様に、すべてが職人の手作業によって作られる新型バックパック。まず目を引くのは、直線と曲線が融合した独特の美しい造形だ。下部が細くなったすっきりとしたフォルムで、性別、年齢を選ばず、あらゆるシーンに対応できる。見た目とは裏腹に、3層構造になっているので、収納力はたっぷり。ノートPC、A4ファイルはもちろん、ファスナーが付いたポケットが数カ所あり、ガジェットや小物の大きさに合わせた収納に便利なうえ、底が浅いポケットは出し入れがとてもしやすい。そして、ランドセル作りで培った技術を生かした背面と肩ベルトの裏側にはソフト牛革を使用し、背負い心地の良さも抜群だ。
「今回は革の魅力を引き出すために新しい挑戦もしています」と、持丸さん。2タイプある新型バックパックのうちの一つは、革の表面に模様が浮き出ているようなデザインで、「シグネチャーレイズド」仕様の特別バージョンと呼ばれている。土屋鞄の頭文字である「T」を連続模様としてあしらったオリジナルパターンを、熟成型による加工で立体的に浮き出させたものだ。
「Tは土屋の頭文字であると同時に、この文字を積み重ねることで“集積”という意味合いももたせています。これまでの技術の集積という意味も込めて、この表現になりました。最初は凹凸感がくっきりしていますが、使い込んでいくほどにこの表面が馴染んで柔らかい雰囲気になっていくので、そういうテクスチャーの変化も楽しんでいただけると思います」
色はブラックとブラウン。6月に新装オープンした京都店限定で、ブルーも発売予定だ。
また、京都店には主に修理などを行うクラフトワーク・スタンドが新たに設置され、店内を訪れた人が職人の手仕事を直に見ることができるようになっている。
「海外からのお客様も多い京都で、より多くの方に見てもらえればありがたいですね。それも、日本のものづくりの根底にある「丁寧」という価値観を世界の人にも知ってもらうきっかけになれば、と思っています」と話す持丸さん。職人が丹精込めて作り上げた革製品を、より長く使い続けてもらうために、リペア(修理、手直し)に関する企画でも、今後また新たな発信をしていきたいという。土屋鞄のさらなる挑戦が続く。