繊細な組子細工を活かした多彩なものづくり
柔らかな障子の光を通して浮かび上がる、麻の葉や亀甲などの美しい幾何学模様。釘をいっさい使うことなく、小さな木片を手作業で組み合わせてさまざまな模様を編み出していく「組子細工」は、日本の伝統的な木工技術だ。平安末期に生まれた障子や欄間などの建具が時代とともに発展していく中で、装飾技法として進化を遂げ、江戸時代に開花。花柄や雪の結晶、吉祥模様など、200種類以上もの模様が今に伝えられている。
伝統の技術を受け継ぎつつ、新たなものづくりにも取り組んでいるのが、江戸組子 建松だ。創業者の田中松夫氏は、建具屋で修業しながら独学で組子細工の技術を習得し、1982年に独立した。現在も、息子である2代目・孝弘さんとともに、機械に頼らない細やかな手仕事を貫き続けている。
繊細かつ緻密な組子細工の制作は、良質な木材選びから始まる。主に使うのは、日本三大銘木といわれる木曽桧や秋田杉、青森ヒバ。木材は細く挽き割り、溝や穴、ホゾ加工を施してから組み合わせる。最初に格子組みや菱組みで大枠を形成し、それぞれの桟の中に細かな木材のパーツを組み入れて模様をつくっていくが、「少しでもズレるとうまく組み合わさらないため、わずか0.1mmの誤差も許されません」と田中氏はいう。そうした精巧な技の奥深さを知ってほしいと、定期的に全国各地の百貨店で実演販売も行っている。
建具の需要が減っている昨今は、現代のニーズを取り入れた製品づくりにも意欲的だ。テーブルやキャビネットなどの家具、花器やコースターなどの小物、行燈タイプの照明など、組子細工の美しさを存分に活かした多彩な商品が評判を呼んでいる。
「伝統を踏まえつつ、ふだん使いできる組子製品を、国内外にどんどん発信していきたいです」