組子細工の可能性を広げた、アーティストとのコラボレーション組子細工の可能性を広げた、アーティストとのコラボレーション

組子細工の可能性を広げた、アーティストとのコラボレーション

木々の緑が取り巻く屋外に置かれた、繊細な組子細工。組子を挟み込んだガラスに描かれたカラフルなアートとの組み合わせが美しく、柔らかな木漏れ日が作品の表情を刻々と変えてゆくーー。これは、去る3月に東京の小石川後楽園で開催された「江戸東京リシンク展」での、江戸組子 建松の展示。現代美術家の舘鼻則孝さんがディレクターを務めたこの展覧会は、江戸東京きらりプロジェクトの一環として実施され、江戸組子 建松を始め6事業者が参加。伝統産業の価値や魅力を、舘鼻さんが新たなかたちで提案する試みが評判を呼んだ。

組子細工の可能性を広げた、アーティストとのコラボレーション

「舘鼻さんなら、自分では思いつかない発想をもたらしてくれるのでは」という思いで参加を決めたと、江戸組子 建松の二代目・田中孝弘さんは語る。今回のコラボレーションで採用されたのは、「変わり麻の葉」と「桔梗亀甲」という繊細な2種類の伝統文様。それぞれの組子をガラスで挟み込んだ舘鼻さんは、両面にアクリル絵の具で雷雲を描き、奥行きを感じさせる作品に仕上げた。麻の葉、桔梗、雷雲の組み合わせは、いずれも魔除けの意味をもつ文様同士という意図もあったという。

組子細工の可能性を広げた、アーティストとのコラボレーション

「想像していた以上に斬新なプレゼンテーションに驚きました。大胆でカラフルな雷雲の文様と繊細な幾何学文様の組子が合わさることで、それぞれが引き立って非常にきれいでした」と語る田中さん。組子ではほとんど見られない屋外展示だったことも新鮮だったという。周囲の木々の緑ともしっくり調和し、光が当たった時の陰影が作品の立体感をさらに浮かび上がらせる効果を生んだ。展示を見た顧客からも「組子の新しい可能性が感じられた」と大好評だったそうだ。

組子細工の可能性を広げた、アーティストとのコラボレーション

伝統工芸は完成されており変わらないものだと思われがちだが、時代に合わせて変化してきたからこそ現代まで生き残っているのではないか。そうした思いを改めて実感したと田中さんは語る。

「展覧会のテーマである“Rethink”や、江戸東京きらりのコンセプトである“old meets new”も、伝統にどうやって現代的な意味づけをしていくかという方向性は同じだと思います。今回の経験で、組子もまだまだ進化できるはずだと確信することができました」

Photo by GION