“粋は進化する”をテーマに、飽くなき探求心で変化を遂げてきた組紐・龍工房。「江戸東京リシンク展」を通して見えた新たな世界とは

“粋は進化する”をテーマに、飽くなき探求心で変化を遂げてきた組紐・龍工房。「江戸東京リシンク展」を通して見えた新たな世界とは

組紐には“用途”と“美しさ”だけでなく「縁を結ぶ」「人と人を結ぶ」など、人同士の繋がりや敬意の象徴として古くから愛されてきた。組紐と聞くと、着物の世界をイメージされるだろう。しかし、今展覧会では現代美術家舘鼻氏の手によって、これまでとは全く異なる世界観が示された。それに接したとき、龍工房にはどのような未来が映し出されたのか

“粋は進化する”をテーマに、飽くなき探求心で変化を遂げてきた組紐・龍工房。「江戸東京リシンク展」を通して見えた新たな世界とは

丸台を使い、絹糸を規則正しく組み上げていくことによって組紐が形成される。

これまでにない物を形にする想いや、可能性を追求することがリシンクにつながる

今展覧会では、舘鼻氏のディレクション作品として、龍工房の組紐を用いたヒールレスシューズが発表された。これまでの組紐の概念を覆し、斬新且つ新しい姿に思わず目が奪われる。龍工房の福田隆太氏は語る。「今までも組紐で用途が全く異なる椅子を製作するなど、新たな試みはしていたのですが、靴を表現すると聞いたときは大変驚きました。今回の取り組みでは心に響く衝撃が多々あり、例えば生地の製作過程で作業しやすいように、場所によって組み心地を変えるなど工夫しました。さまざまなチャレンジを通して改めて気づいたことは、まさに用途に合わせて柔軟に対応できる組紐の真価です。また、舘鼻さんのように誰も想像できないようなものを生み出そうとする、その気持ちこそがリシンクにつながるのだと大変刺激を受けました」。長年同じものを極めているからこそ見える視点もあるが、ときには積み上げてきた概念に囚われてしまうこともある。職人にとって“リシンクする”ということは、踏み出す勇気が必要である一方、新たな可能性に心躍らされることでもあるように感じた。

“粋は進化する”をテーマに、飽くなき探求心で変化を遂げてきた組紐・龍工房。「江戸東京リシンク展」を通して見えた新たな世界とは

舘鼻氏の代表作でもあるヒールレスシューズによって、龍工房の組紐が新たな姿にリシンクされた。

“粋は進化する”をテーマに、飽くなき探求心で変化を遂げてきた組紐・龍工房。「江戸東京リシンク展」を通して見えた新たな世界とは

龍工房独自のバランスが風合いに映し出された帯締めが並ぶ。

進化の中でも“用”と“美”そして“技術”は欠かせない

「新たな可能性を生み出すには、これまで継承してきたことを元に、素材の変化など、さまざまなことに柔軟に対応をしていくことが必要です。今はまだ、組紐=帯締めという認識が強いかも知れませんが、まずは自分たちが欲しいもの、使いたいものを製作し、それをきっかけに新たな価値を作れたら考えています」と福田隆太氏。何事にも果敢にチャレンジし、追求する姿勢には強いエネルギーを感じる。この“1本の組紐”をどのようにリシンクしていくのか、今後も龍工房から目が離せない。



江戸東京リシンク展|東京くみひも 龍工房
https://edotokyorethink.metro.tokyo.lg.jp/exhibitor_1.html

関連コンテンツ

前衛的な姿が目を引く、龍工房の組紐で作られたヒールレスシューズ。
そこに見える、強い覚悟と新たな次元への兆しとは
https://edotokyokirari.jp/column/life/rethink-20_report_ryukoubo

時代の変化とともに進化する組紐・龍工房。思わず心奪われる、現代の組紐の姿とは
https://edotokyokirari.jp/column/life/rethink-20_ryukoubou_ubushina