「魅惑的な美しさを放つ“紅”の新たな可能性と、現今唯一の紅屋としての覚悟とは

「魅惑的な美しさを放つ“紅”の新たな可能性と、現今唯一の紅屋としての覚悟とは

色鮮やかな紅は、生命を象徴させるものとして“魔除け”に使用されるなど、装飾するものとしてだけでなく、古くから人々の人生の節目に彩りを添えてきた。今展覧会では江戸時代の“美”を象徴する紅が、現代アーティスト舘鼻則孝の手によって新たな姿に変貌を遂げた。それを目の当たりにしたとき、老舗紅屋・伊勢半本店は何を想い、何を感じたのか

「魅惑的な美しさを放つ“紅”の新たな可能性と、現今唯一の紅屋としての覚悟とは

舘鼻氏の手によってリシンクされた、「紅」の新たな姿が展示される。

展覧会を通して、紅の新たな側面やこれからの可能性が見出せた

今展覧会では、伊勢半本店の紅を使用し、舘鼻氏によるディレクション作品が製作された。中でも、本来なら出すことが難しいとされていた“玉虫色”に注目したヒールレスシューズは圧巻のクオリティだ。過去にも現代にもない、紅の未来の姿が映し出されたような作品をみたとき、どんなことを感じたのだろうか。「本当に驚きました。革という素材の上で、あそこまで鮮やかな玉虫色が表現できるとは思ってもみませんでした。これまでのような、お猪口の中だけの小さな世界ではなく、ヒールレスシューズという全く新しい形で表現された作品から放たれるパワーや存在感に衝撃を受けました。同時に、リシンクされたことによって紅の新たな可能性を知ることができ、私たちにとっても目から鱗でした。非常によい経験になったと思っています」。上質な素材の証として紅が放つ魅惑的な輝きの理由は、いまだに解明されていない。そのミステリアスな表情も含めて、人々は紅に魅了されるのだ

「魅惑的な美しさを放つ“紅”の新たな可能性と、現今唯一の紅屋としての覚悟とは

“玉虫色”の色彩は良質な紅の証、使う人によって発色が変わる。

「魅惑的な美しさを放つ“紅”の新たな可能性と、現今唯一の紅屋としての覚悟とは

昔から一筋に変わらないものを作っていても、あの発色を見るたびに常に新鮮なインパクトを感じるのが紅の魅力

紅の新たな可能性を感じる一方で、伊勢半本店では現今唯一の紅屋としての伝統を、今後も継承していく覚悟を持っている。「あの極めたとも言える色彩は、江戸時代に既に完成されたものながら、現代でも決して安定して出せる色ではなく、職人は一喜一憂しながら不変に魅了する色を追い求め続けています。400年ほど前の時点で究極という位置まで達していたことを考えると、ただ古くからあるものとして捉えるのではなく、その良さをかたくなに守りながら、本来の魅力を発信し続けることが私たちの役割だと思います。それにより、どの時代の人にとっても、常に新鮮な紅の価値を感じてもらえるのではないかと考えます」。一見シンプルだが、あらゆる顔を持つ“紅”。「江戸東京リシンク展」で紅の不思議な魅力を感じて欲しい。



江戸東京リシンク展|小町紅 伊勢半本店
https://edotokyorethink.metro.tokyo.lg.jp/exhibitor_6.html

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