「江戸小紋を次世代に引き継ぐことが、私の生きる意味合いだと思います」。廣瀬染工場四代目・廣瀬雄一氏が語る“極小の美の世界”にかける想いとは
2021.02.26
LIFE江戸時代、武士のお洒落のたしなみから誕生した“江戸小紋”。柄一つ一つには願いや意味が込められ、身分問わず多くの人々に愛された。職人たちは“いかに微細で美しい柄”を彫り出し、染め上げるかという“極小の美”を追求し続けた。日本の「粋」と「美」の象徴ともいえる江戸小紋を、廣瀬染工場はどうリシンクするのか、その覚悟に迫った
江戸小紋のルーツは武士の礼装で知られる裃から発達した。
国境を越えて“新たな息を吹き込み、今までなかった価値を生み出す”
“美”や“ファッション”への探究心を感じさせる江戸小紋。現代では、誰もが自由にファッションや流行を追い求めることができるが、“伝統産業”はトレンドとはまた別の一つの技の世界。廣瀬染工場はそれをどのように未来へと継承していくのか。試行錯誤の中、江戸小紋をリシンクする一つの手段として、海外にも目を向けるようになったという。「仕事柄パリに行く機会が多く、フランスで伝統技術を継いでいる人々に江戸小紋のことを知ってもらう活動をしています。フランスのデザイナーと新たな小紋を作るというプロジェクトも構想するなど、色々と新たな価値が生まれるような気がしています。江戸小紋は江戸時代から受け継いでいる紋様ですが、デザインという観点では世界共通なので、広くグローバルに存在意義があるのではないかと考えます」。海外ならではの視点を取り込むことで、新たな可能性に気づく。廣瀬染工場の、固定観念に囚われない、世界に視野を向ける柔軟な姿勢を、「江戸東京リシンク展」を通じて感じ取ってほしい。
遠目からでは気付くことのできない綿密な柄に、職人のこだわりが表れる。
“自信を持つこと”こそが次世代につなげる“力”となる
「国内だけで活動していると、ときには未来が不安になることもあります。ですが、海外に目を向けて我々が培ってきた文化と共にデモストレーションをすることで、“自分たちはこれだけ価値あるものを受け継いでいるのだ”と自覚することができます。自信を失うと商品が作れなくなり、次世代に伝えることもできなくなります。“自分の仕事に自信を持つ”ということは、僕の活動の中でとても大事にしていることです」。廣瀬雄一氏が語ったことは何かを成し遂げる上で非常に重要だが、決して簡単なことではない。そうすることで自らを奮い立たせ、前進し続ける力にしているのであろう。その覚悟と強さが「極小の美の世界」で日々、繰り広げられているのではないだろうか。
四代目・廣瀬雄一氏の名前が入った江戸小紋は、本人にしか表現できない“作品”である。
江戸東京リシンク展|江戸小紋 廣瀬染工場
https://edotokyorethink.metro.tokyo.lg.jp/exhibitor_2.html
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