新たな着眼点で、暖簾を未来へとつなげる

新たな着眼点で、暖簾を未来へとつなげる

日本で古くから間仕切りや屋外広告として活用されてきた暖簾(のれん)。この企画、デザイン、製作を行っている中むらは、1月にロンドン・パリで開催された「江戸東京きらりプロジェクト」のイベントに出展するにあたり、『暖簾考 〜NOREN ENTRANCE TO JAPANOLOGY〜』という本を作成した。暖簾を構成する重要な要素を各界の専門家たちと対談した内容を納めたこの本を企画・監修した、四代目中村新(Shin Nakamura)さんに話を伺った。

新たな着眼点で、暖簾を未来へとつなげる

「職人さんの優れた技術を活かした暖簾づくりを通じて、暖簾を現代に再提案すると共に、手仕事の新たな価値をつくる活動をしています。日頃から、暖簾については日本人なら誰でも知っていても、その一歩先は知られていないということを感じています。しかし、暖簾には日本独自の文化や哲学が詰まっています。そこで、この本を通じて、改めて暖簾のもつ面白さを伝えたいと考えました」

自分の主観だけではなく、さまざまな人の視点による“集合知”で暖簾について考えることで、未来へ繋げられればと中村さんは語る。また、暖簾だけに留まらず、他の伝統工芸や老舗においてもこういった活動がヒントになればと考えているそうだ。

「古いものが新しいこともあると思いますし、表層だけを新しくしても、あまり意味はないでしょう。何百年も続く老舗を営んでいる方も、軸がぶれなければ、新しい挑戦をすることに抵抗はないとうお話を聞きました。変えていい部分と変えてはいけない部分が分かっていることが、大切なのだと思います」

さまざまな技術や経験を持った職人と交流する中で、中村さんは、自身が一番の熱量を持って、プロジェクトを動かしていくことを意識しているという。「職人さんはみなさんすごい技術や経験、仕事に対する想いをもっているので、仕事を通して、良い熱量を共有できるのがうれしいです。チームワークの大切さも痛感しますし、その中でも自分は『伝える』という役割を大切にして行動していきたいです」

柔らかに語ってくれた中村さん。だがその静かな語り口の裏には、圧倒的な熱量がこもっていた。暖簾が繋ぐ未来が楽しみだ。

新たな着眼点で、暖簾を未来へとつなげる