【江戸東京リシンク展】ディレクターズメッセージ 舘鼻則孝【江戸東京リシンク展】ディレクターズメッセージ 舘鼻則孝

【江戸東京リシンク展】ディレクターズメッセージ 舘鼻則孝

江戸東京きらりプロジェクトのコンセプトである“Old meets New”。

東京には、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和の時代にまで続く、数多くの「老舗」が存在しています。そして、そこにはさまざまな技、文化、伝統が息づいている。そうした東京の魅力を国内外に伝えたいという思いからスタートしたのが本プロジェクトになります。今回、その活動の一環として開催される「江戸東京リシンク展」に、私は、作家としてだけでなく、展覧会ディレクターとしても参画しています。私はこれまで“Rethink”という言葉を冠した展覧会をいくつか開催してきましたが、本プロジェクトのコンセプトである“Old meets New”と“Rethink”という概念は多くの共通点を有していると考えています。“Rethink”が意味するところを簡略化して言うなら、途切れることなく続く日本の伝統、あるいは文化を、現代においてそのまま再現するのではなく、現代的な意味を加えて表現するということです。そのため、私の作品はすべて、日本のこれまでの歴史、文化があってこそ、成立しているとも言えます。その点において、“Old meets New”と“Rethink”は同義であり、だからこそ、これまで数多くの伝統工芸、伝統芸能とコラボレーションする形で、過去と現在をつなぐ活動をしてきたのです。時代は変わっても変わるべきでないもの、時代が変わるからこそ変わるべきものを見極め、伝統を次の100年に残していくために、今、私たちが何をなすべきか。伝統をどう現代的な意味づけをして打ち出していくか。今回の展覧会は、東京の魅力を伝える場であるとともに、私たち自身がリシンクするための機会でもあるのです。

江戸東京きらりプロジェクト 推進委員
江戸東京リシンク展 展覧会ディレクター
現代美術家 舘鼻則孝

Special Movie: Edo Tokyo Rethink


【江戸東京リシンク展】ディレクターズメッセージ 舘鼻則孝

現代美術家 舘鼻則孝 × 江戸組子 建松(えどくみこ・たてまつ)

繊細な組子細工を活かした多様なものづくりを得意とする建松とのコラボレーション作品では、組子細工による伝統的な幾何学文様と舘鼻則孝氏がアクリル絵の具で描く雷雲のモチーフがレイヤーとなって表現されている。作品に用いられた「変わり麻の葉」と「桔梗亀甲」と呼ばれる2種類の文様は、古くから魔除けの意味を持つとされてきた。同様に舘鼻氏が描く雷雲も日本では古くから結界を象徴し、魔除けの意味を持つモチーフとして、それぞれの文様同士がリンクしている。

【江戸東京リシンク展】ディレクターズメッセージ 舘鼻則孝

現代美術家 舘鼻則孝 × 江戸木版画 高橋工房(えどもくはんが・たかはしこうぼう)

左右から異なった2種類の図案を鑑賞することができる《Duality Painting Series》と呼ばれる舘鼻則孝氏の絵画作品が木版画として表現された作品。紙を手で折っただけのシンプルな構造が視覚効果を与え、作品のコンセプトでもある二面性が示されている。4枚の版木の両面に彫られた図案を摺り重ねることで完成に至る本作は、版数以上に多くの色が摺り重ねられることで鮮やかな色彩や深みのある色味が画面に現れている。

【江戸東京リシンク展】ディレクターズメッセージ 舘鼻則孝

現代美術家 舘鼻則孝 × 和太鼓 宮本卯之助商店(わだいこ・みやもとうのすけしょうてん)

雷鳴を神仏の来臨に擬えて、雷神の持つ雷鼓を表した作品。玩具太鼓と呼ばれる4.5寸の小さな太鼓を連結し制作された。宮本卯之助商店の職人が制作した太鼓を円形に繋ぎ、現代美術家・舘鼻則孝氏のアトリエで彩色を施して完成させた。本作に使用されている太鼓は、皮を張る前、乾燥させる工程で歪んでしまったり、割れてしまったことで、製品にすることが叶わなかった昭和50年代のもの。

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現代美術家 舘鼻則孝 × 東京くみひも 龍工房(とうきょうくみひも・りゅうこうぼう)

本作のために新たに考案された組み方で組まれた正絹製の「角紐」は、表と裏で色が異なっている。これは、江戸の粋な美意識とも言える着物の羽裏から着想を得たもので、一見モノトーンに見える作品の差し色として豊かな表情を生んでいる。また、60ミリのピッチで正確に「結び」を入れることで、立体的なテクスチャーを与え、それらが集合することで現れる表情は作品の重要なアクセントとなっている。背面に施されたのは、「総角結び(あげまきむすび)」と「あわじ結び」という2つの吉祥文様が連続することで完成に至る飾り結び。「藤四ツ組(ふじよつぐみ)」で組まれた丸紐に入った屈曲した差し色のラインが抑揚ある見え方を演出している。

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現代美術家 舘鼻則孝 × 江戸切子 華硝(えどきりこ・はなしょう)

伝統的な文様から現代的なデザインまで多様な表現に挑戦し続けている華硝とのコラボレーション作品は、舘鼻則孝氏が描く雷雲のモチーフが繊細な切子文様として意匠化され表現されている。勢いのある輪郭線の表情と、その中を埋め尽くすようにカットされた伝統文様の「魚子」が視覚的なコントラストを生み出している。また、ガラス器の外形は雲をイメージして舘鼻氏によって描かれた輪郭線がカットラインとして写し出されており、器の外形と切子文様が一体となることで雷雲のモチーフが表されている。

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現代美術家 舘鼻則孝 × 新江戸染 丸久商店(しんえどぞめ・まるきゅうしょうてん)

1970年代に丸久商店が発表した貴重な歴史的資料に収録されている図案に、舘鼻則孝氏が雷雲のモチーフを描き足すことで完成させた作品。注染と呼ばれる伝統技法で染め上げられた本作は、1枚の型紙にもかかわらず多くの鮮やかな色彩で同時に染め上げることが可能な技法の特性を活かした内容となっている。舘鼻氏がモチーフとして選んだのは、日本舞踊の長唄「雨の五郎」にまつわる「五郎蝶」。日本の芸事に関連する意匠は、丸久商店が代々継承してきた代表的なものでもある。

アーティストプロフィール

舘鼻則孝(たてはな のりたか)

1985年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻卒。卒業制作として発表したヒールレスシューズは、花魁の高下駄から着想を得た作品として、レディー・ガガが愛用していることでも知られている。現在は現代美術家として、国内外の展覧会へ参加する他、伝統工芸士との創作活動にも精力的に取り組んでいる。作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館などに永久収蔵されている。

Photo by GION

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