表現は変えても、変わることのない本質

表現は変えても、変わることのない本質

1月にロンドン・パリで開かれた江戸東京きらりプロジェクトのレセプション。
榮太樓總本鋪のブースでは、サクサクとした歯ざわりに、さっと溶ける口当たりが特徴の“板あめ 羽一衣(はねひとえ)”が注目を集めていた。

「今回の展示会の為に、ヨーロッパのデザイナーに協力を依頼して、パッケージを無地のシンプルなデザインから、素材のイメージをあしらったカラフルなものにして、日本の商品であることが分かるように、あえて日本語の表記も入れました。また、海外の脱プラスチック機運の高まりに合わせ、プラスチック製だった包装を紙製に変更しました」と、商品企画開発を担当する蟹江浩一さんは言う。

表現は変えても、変わることのない本質

通常のパッケージデザイン。

表現は変えても、変わることのない本質

今回のレセプションの為のデザイン。 ※非売品

2013年に和食が無形文化遺産に登録されたことをきっかけに、和菓子への関心が高まっている海外市場で榮太樓總本鋪はどんな展開を目指すのか。

「海外の人にアプローチしていきたいという思いはもちろんあります。だからと言って、海外の人の味覚に合わせて味を変えるということはしません。和菓子ってこういう味なんです、ということをきちんと伝えたい。その為に手間暇を惜しまず、丁寧につくった商品を提供すれば、和菓子のおいしさは必ず伝わると思っています」

表現は変えても、変わることのない本質

榮太樓總本鋪はこれまでも伝統の味を守りながら、市場の動きに合った商品開発を手掛けてきた。中でも、あめやえいたろうブランドの“スイートリップ”は、砂糖と水飴を丁寧に煮詰めた伝統の「有平糖」という飴を、リップグロスの容器で販売するという斬新さで大ヒットにつながった。

「表現の方法は変えても、本質は決して変えない」と蟹江さん。伝統の味を守ることそのものに榮太樓總本鋪の存在価値がある。その思いを真摯に伝えれば、海外でもきっと受け入れられることだろう。