美髪効果のある本つげ櫛を、日々のお手入れと、おしゃれにも。
2023.09.15
FASHION古くから日本の髪結い道具として使い続けられてきたつげ櫛。今も、日本髪を結う歌舞伎や日本舞踊、相撲の世界などではおなじみだ。そのためか、つげ櫛を日本髪専用の道具と思っている人もいるようだが、そんなことはない。
「つげ櫛には髪を美しく整えてくれる美髪効果があります。だからこそ、あらゆるヘアスタイルの方に普段のお手入れから是非、使っていただきたいですね」と話す、本つげ櫛の専門店「よのや櫛舗」の齋藤有都さん。ということで、どうしてつげ櫛には美髪効果があるのか、その秘密をご紹介しよう。
まず、つげ櫛の材料となる木材「本つげ(薩摩つげ)」の特性だ。つげ櫛とは「本つげ」を用いた櫛のこと。本つげには、硬さと粘り(弾力性)を併せもつ特徴があり、これが櫛に最適といわれている。
「つげ櫛を正しく使って髪をとかすと、その硬さと粘りでキューティクルをしっかりと掴んで整えていくので、サラサラで艶やかな髪になります。また、一般的に天然木の櫛は静電気が起こりにくい特徴がありますが、中でも本つげは静電気が起こりにくいといわれています。静電気が起こると髪が絡んだり、枝毛や切れ毛ができてしまう原因になりますが、その点、本つげを使ったつげ櫛は髪を傷めにくいというのも大きな特徴です。本つげは西日本の温暖な地域に分布していて、「よのや」では鹿児島県指宿の“薩摩つげ”のみを使用しています」
次に、職人の手で櫛の歯を整える仕上げの作業だ。木材を櫛の形に切り出した後に、歯の間や先端の部分を研いで、髪や頭皮に直接、触れる面を滑らかにしていく。
「研ぐための道具には「トクサ」と呼ばれる植物を煮て、乾燥させたものが使われています。歯の間や先端を研ぐのは、頭皮や髪に直接触れる部分の“あたり”をやさしくするためで、髪を傷めない上に頭皮へのマッサージ効果も出てきます。マッサージして頭皮の血行が良くなることで、抜け毛や薄毛を予防する効果もアップします」
さらに、出来上がった櫛を椿油に漬け込んで仕上げるのも、美髪効果の秘密の一つ。
「櫛を使っていくたびにその油分が髪と頭皮に少しずつ浸透して潤いが補充され、パサつきや乾燥から髪を守ってくれる効果が生まれます。そのため、つげ櫛を使い続けていると、自然に健康で自然なツヤのある髪になっていきます」
さまざまなヘアケアを試している人も多いかもしれないが、もしかしたら髪をとかすという基本的な行為が髪に負担をかけていることもあるかもしれない。その点、つげ櫛を使って髪をとかすという毎日のシンプルなお手入れを続けるだけで、髪がいい状態になっていくのなら、簡単だし、こんな嬉しいことはない。
髪の健康にもいい本つげを使ったヘアアクセサリーの中から、これからの季節におすすめのものをいくつか紹介してもらった。
「本つげ 一本脚 銀杏唐草の簪」
「秋冬シーズンに着る機会が増えるタートルネックに合わせて髪を高い位置でアップした時などに、この簪はオススメです。やや小さめですが、斜めに挿しても、真横から挿してもしっかり形や模様が映えますし、可愛らしい雰囲気でとても使いやすいと思います」
「本つげ 唐草模様の棒留め」
「どこかエキゾチックな雰囲気のあるマジェステ(=棒留め)はドレスアップした時やウェデングにもぴったり。透け感のあるブラウスやニット素材にも合いますし、パーティーシーズンでたくさん活躍してくれそうです」
「本つげ拭き漆の髪飾り」
「実際につけてみると、色はそんなに派手にならず、髪が短めの方でもワンポイントのオシャレとして楽しんでいただけるデザインです」
「本つげ一本脚扇型 上彫り麻の葉の簪」
「鎌倉彫の職人さんとコラボした新商品です。硬さと粘りをあわせもつ薩摩つげに、素朴で力強く温かみのある鎌倉彫の彫刻をしていただきました。使うほどに薩摩つげの木地のぬくもりを感じていただける一品です」
猛暑の夏が終わり、少しずつ空気が乾燥して気温も下がってくるこれからの季節、本つげの櫛やヘアアクセサリーで、潤いある髪とおしゃれ心を満たして過ごしていきたい。