江戸組紐は目に見えない たくさんのものを繋いでいる。
2019.11.12
FASHION〜 江戸の「粋」を今へ 〜
家業より始まり今年で130年目となる龍工房。江戸組紐の特徴について、龍工房当主で現代の名工・東京都伝統工芸士である福田隆さんに伺った。「江戸の文化は『野暮』か『粋』しかないんです。私ども江戸っ子は、いつも粋でありたいとの思いでモノづくりに取り組んでいます」隆さんは江戸組紐についてこう語る。「組紐の細さや房の量、色、縞や線での柄の表現など、自分が職人として納得するまで、これでもかこれでもかと、こだわりをいっぱいちりばめる。そのこだわりをあえて出さない潔さが江戸の粋につながります」
三代目の隆太さんが話を続ける。「例えば墨色を使ったものでも、江戸組紐の粋な色というのは、真っ黒ではなく、ちょっとグレーがかっていたりします。『ああ、かっこいい渋い色目だね』というふうに色で差をつけます」
龍工房では、糸を組む専用の台として、丸台、角台、綾竹台、高台、を使う。隆さんはこう語る。「普通は複数の組み台を扱うことはありません。ところがうちではすべての台を使える技術がある。そして、純国産絹糸の糸づくりから染色、組み加工までを一貫してできます。丁寧に想いを込め、持っている技術のすべてを込めていく。たくさんのこだわりが込められて、江戸の粋が完成します」
「組紐は今まで、さまざまなものを繋いできました。そして、ものと人、人と人を結ぶものであります」と隆さんは語る。龍工房では、この国の文化として伝わる拍子木の2本の木も、自らの組紐で繋いだ。2019年の東京マラソンでは、たくさんの人の心に届く応援グッズとして用意したという。「糸偏の漢字はたくさんあります。『結』も『絆』もそう。『繋ぐ』にも糸がありますし、組紐の『組』と『紐』も糸偏です。さまざまなものと人を繋ぎ、人と人を結び付ける存在価値があります。この存在価値を活かして、さまざまな人を結ぶモノづくりに、これからも取り組んでいきます」と、穏やかに語る隆さんだった。