「好き」だという熱い気持ちが どんな世界でも、決め手になる

「好き」だという熱い気持ちが どんな世界でも、決め手になる

自分がほれ込んでいなければその良さは人に伝わらない

百年以上にわたり江戸小紋をつくり続ける老舗・廣瀬染工場の四代目、廣瀬雄一さんにお話を伺った。廣瀬さんは、仕事との向き合い方についてこう語る。「どんな世界でも成功している人は自分のやっていることがものすごく好きな人が多い。たとえばイチロー選手にしても、野球がとても好きで、それに対する努力を人一倍して成功している。ほかの業種でも、自分の仕事がとても好きで、その仕事に一生懸命取り組んでいる人の話を聞くのは楽しいものです。私も江戸小紋がとても好きだし、この世界では自分がいちばん江戸小紋のことを考えていると思います」

「自分が惚れ込んでいるものでなければ、その良さはきっと人に伝わりません」と語る廣瀬さん。子どもの頃から家業に憧れがあり、いつか自分の仕事として情熱を注ぐことを想像していたという。「魚屋の子は魚を売りたいのであって、寿司を握りたいわけじゃない。そして染屋の子である自分は、染めたい。染めの世界で勝負したい」と、その熱き血について語る。

以前は、販売プロモーションに力を注いだ時期もあった。「自分で会社の売上戦略を考え、3年間継続した目標を立てて達成したこともありました。ところが全国でのプロモーションや打ち合わせで忙しくなり、工房で手を動かす時間が減ってしまうのが嫌だった。自分は経営者ではなく、プレーヤーでありたい。そう思ってから、ますます工芸の魅力に惹かれるようになりました」

さらに、廣瀬さんは続ける。「この仕事は、やればやるほど年々楽しくなっていく。ずっと仕事のことを考えていて、仕事のない休日ほど退屈なことはない。これほど仕事が楽しくてしょうがないのは、頼まれたことに応えるだけではなく、自分が作りたいもの、発信したいものを生み出してきたからこそ、なのかもしれません」。そう語る廣瀬さんの言葉の一つひとつに、静かな生命が宿っているようだった。