洋装にも和装にも似合う創作ぞうりで、足元を美しく
草履は、台と鼻緒の組み合わせで出来上がる。特に鼻緒を台に通す作業工程の「スゲ」は、草履の履き心地を決めるかなめでもある。腕の良い職人が一人一人の足に合わせて鼻緒をスゲると、草履はまるで足裏に吸い付くようにフィットして、歩き方も美しくなり、何よりどこまで歩いても疲れることがない。
「四谷三栄」は昭和10年創業以来、草履を求める人々の厚い信頼を得てきた。
赤坂に店を構えていた創業当時は、赤坂花街で次々と求められた。芸者衆はファッションリーダーとしての役割も担っていたため、足元のおしゃれにも感度が高い。戦後になって四谷へ店を移した後は、茶道や日本舞踊のお師匠方のご贔屓にも預かるようになり、四谷三栄は、格式のある席でも好まれるおしゃれな草履として広く知られることとなった。
長く支持されてきた理由は、スゲの腕の確かさに加えて、上質でセンスの良い品揃え。顧客の声に応えることで、職人の腕も目も磨かれていき、今がある。現在三代目として暖簾を守る伊藤実氏が「先輩方の養ってきた草履の歴史がお客様をつなぎ、お客様自身が私たちを育ててくださる」と語るのはまさにその思いがあるからだ。
近年、オリジナルブランドを立ち上げてからは、ここにしかない染めの色調と、個性的な素材が、国内外で人気を博している。
ひとつ出来上がるまでにデザインから仕上がりまで2~3ヶ月はかかるというが、今のライフスタイルに合わせて、洋装にも和装にも似合う履物となっている。伊藤氏は「草履は日本独自の履物ですから、海外のコレクションなどを通じて、世界中の方々にご覧いただけたら」と、草履の未来を見つめている。