内野のタオルが文化を越えて愛される理由
2024.09.09
LIFE材料となる綿糸から商品まで一貫して高品質のものづくりを追求する内野は、1988年、生産拠点となる合弁会社をタイに設立したことを皮切りに、グローバル展開を積極的に進めてきました。同年にはフランス・パリとドイツ・フランクフルトに事務所を開設し、90年には、販売力を強化するためシンガポールに現地法人を設立。それから40年近く、ヨーロッパとアジアを中心に販路を拡大し、現在では世界31か国で内野のタオルや特許素材のウェアが販売されています。
「世界での競争力があって、はじめて日本での競争力が成り立ちます。私たちは“世界のUCHINO”にならなければ生き残れないという考えから、いち早く海外に乗り出してきました。おかげで最近では、日本を訪れた旅行客が店舗に来店され、タオルに触れたり、ウェアを試着したりとショッピングを楽しまれることも増えています。先日、渋谷スクランブルスクエア内の旗艦店に顔を出したのですが、『ここは海外店舗かな?』と思うくらい外国人客でいっぱいでした」
笑顔でそう語るのは、取締役副社長執行役員で海外戦略のキーパーソンでもある内野孝信氏。内野のタオルと言えば、ベストセラーとなっている「しあわせタオル」に代表されるように、その軽さと柔らかさが圧倒的な魅力です。しかし、実はその特徴は、海外のマーケットではブルーオーシャンになるのだと内野氏は説明します。
「欧米では昔から、タオルというのは固くて重いものほど高級だとされてきました。そのほうがより多くの糸を使用していると捉えられ、それが贅沢品の証しになっているのです。また、効率の良さが求められる風潮があるので、なるべく丈夫でしっかりとした糸を使うことで、糸切れなどによる無駄を防ぎ、生産性を上げることが重視されます。そうした理由から、そもそも、わが社が作るようなライト&ソフトなタオルが存在しません。だから、海外の店舗や展示会などで何気なく内野のタオルを触った人は、みな口を揃えて『オー・マイ・ゴッド!』と、びっくりして触り直す人が多いくらいです」
軽くて柔らかいタオルは、日本ならではの丁寧なものづくりと、それを支える高い技術力によって生み出される逸品。それゆえ、海外の人にとってはまさに「未知の体験」であり、今後もより大きなマーケットになると期待されています。ただ、驚いてはもらえるものの、そこから実際に使用してもらうまでにはハードルがある、と内野氏は言います。
「どんなに良いものでも、異なる価値観や文化の人たち対して一方的に主張するだけでは、簡単には受け入れてもらえません。まずはこちら側が相手の文化を理解し、受け入れることが必要になります。そこで、たとえば欧米向けの商品はサイズを大きくしていますし、タオルの耐久性がより重要視されるホテルに対しては、そのニーズに応えられるような提案をします。お客様の考えを尊重し、誠実に対応することで、商品の良さを理解してもらい、信頼を勝ち得る──それが、グローバル展開を成功させるうえで最も大切なことだと考えています」
こうした努力の積み重ねによって、他では体験できない手触りと品質の高さ、それを生み出す内野の技術は、今では広く各国で評価されるようになりました。イギリスのハロッズやフランスのル・ボン・マルシェといった高級百貨店も、長年にわたり内野のタオルやウェア、またリラクシングアイテムなどを取り扱っているほか、中国やシンガポールでも多くの人に愛用されています。軽くて柔らかいタオルは、着実に、国境を越えて様々な文化の人々の間で浸透しつつあるのです。
内野では、2024年8月、より一層グローバルニーズに対応するため、ホームページをリニューアルしました。日本語版と英語版に加え、フランス語版、中国語の繁体字版と簡体字版もあります。あわせて、オンラインショップも充実。近年マーケットとして拡大している中国では、同国最大のECモール、Tmall(天猫)にも出店。例年、「独身の日(11月11日)」の中国のEC各社による大規模セールは日本でも大きな話題になりましたが、内野にとってもこの日の売上は別格だったそう。
「妥協なく作り上げる商品を通じて、くつろぎとやすらぎの時間を世界中の人々に届けるためには、ホームページやオンラインショップは重要なツールです。ただ、実際に触れてみて、その柔らかさを実感していただくことが、わが社の商品価値をアピールする最良の方法であることも事実です。つまり、リアルとオンラインの両輪で攻めていかなければいけない。そのために今後も、世界各地の展示会などに積極的に出展して、より多くの人に触れていただく機会をつくりたいと考えています」
内野では今後、北米を中心にアメリカ大陸への本格的な進出を目指しています。それとともに、国内外を問わず、より幅広い層に向けた商品開発にも力を入れるそう。唯一無二の肌触りをもつ日本発のライト&ソフトな商品たちが、世界の人々の価値観と生活を変えてしまう日が、いつか来るのかもしれません。これからも、世界に〝しあわせ〟を届ける内野から目が離せません。