江戸木版画 高橋工房
2022.03.24
LIFE【撞球室】 現代美術家 舘鼻則孝 × 江戸木版画 高橋工房
160年以上もの長い年月、江戸木版画を制作し続けてきた「高橋工房」。
現在は版元として江戸時代の浮世絵版画の復元制作や、現代作家の版画制作を担っている。
コラボレーション作品1点目は、「雷雲」をモチーフとした木版画――。
3種類の特殊な版画技法を通して、現代印刷の原点とも言える江戸文化を再現した。
顔料を使用しないエンボスの技法「空摺」。
正面版を用いて和紙に光沢を与える技法「正面摺」。
浮世絵師・東洲斎写楽、喜多川歌麿作品の背景にも用いられている「雲母(きら)摺り」。
2点目の疱瘡絵には紅を使用。
疱瘡絵は、江戸時代に感染症への護符とされたもので、魔除けの意味を持つ赤い紅が顔料として用いられている。
版画の背景には伊勢半本店の「細工紅」を使用し、江戸時代に実際に摺られていたであろう疱瘡絵の技術の復元に挑戦した。
浮世絵
月岡芳年「月百姿」。高橋工房では、江戸東京きらりプロジェクト事業の一環として、古版木の修復に着手し、芳年の作品を日本のみならず、海外に向けて発表している。
主版
月岡芳年「月百姿」稲葉山の月。主版は作品の輪郭を決める版であり、この版の後に、色版を摺り重ねていく。
修復版木
傷み具合や摩耗の程度を調べた後、「さらい」という作業で、絵面部分の周りを深く削る。摩耗度の激しい部分は、絵面のエッジに小刀を入れて修正していく。ひびの入った版木は、ひびの先端にキリで大きく穴を開け、ひびが前に進めないようにしたうえで、ひびにボンドを注入する。亀裂部分には波釘を打ち込む。
顔料
主たる原料は粉状にした鉱石。水の量の多少で調整し、絵の色に近づける。
本バレン
摺師の道具の要。職人の手によってすべて自然素材でつくられる。
江戸木版画 高橋工房(えどもくはんが・たかはしこうぼう)
安政年間(1854年~ 1860年)に創立し、現在に至るまで伝統の木版画の制作を続けている。初代から継承する「摺師」としての技術と、作品を総合的にプロデュースする「版元」としての幅広い知識と感性を活かし、商品の企画から制作までを行う。
Photo by GION
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