重要文化財 旧岩崎邸庭園
2022.03.24
LIFE旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来
1896(明治29)年に建てられ、現在は国の重要文化財に指定されている「旧岩崎邸庭園」。設計を担当したロンドン生まれの建築家・ジョサイア・コンドルは、旧岩崎邸庭園の他にも、鹿鳴館、ニコライ堂、三菱一号館などを手がけており、「日本近代建築の父」と呼ばれている人物だ。
江戸東京リシンク展は洋館を中心に作品展示を行なっているが、広大な敷地内には、洋館、和館に加え、洋館と地下通路でつながる撞球室(ビリヤード場)も併設されている。
幕末の開国、そして明治維新を経て現代まで、外国文化を取り入れ、文化的に独自の編集を加え、発展を遂げてきた日本。その意味合いにおいても、旧岩崎邸庭園は、明治の息吹を今に伝える重要な文化財と言える。
展覧会における展示構成を考えるうえで重要なのは、その空間と展示物のリレーションだ。午前と午後、また夕方では光の状況も全く異なり、それらの要素はこのような建築で展示をする際、非常に重要な判断材料となる。
例えば、朝の光が美しいサンルームには「江戸切子 華硝」の作品を。
また、「和太鼓 宮本卯之助商店」は、展示物の神輿に後光が差すように1階の婦人客室に展示。和館には、「東京くみひも 龍工房」の作品を展示し、建設当時に描かれた板絵と作品を掛け合わせるなど、空間と展示物の有する魅力がより一層際立つようにと決められていく。
館内の魅力の最たるものは、洋館の随所に見られる17世紀英国で流行したジャコビアン様式を基調とし、複数の様式を織り交ぜながらデザインされた装飾だ。1階ホールの大階段部分に施された花模様の装飾、植物文様の飾り柱、イスラム風の玄関タイル、ステンドグラスなどが来館者を出迎えてくれる。
また、金唐革紙の壁紙が復元された2階客室は、当時の様式を今に伝える貴重な要素であり、工芸的な魅力溢れる空間となっている。
金唐革紙は、ヨーロッパの金唐革から着想を得た日本人が和紙を使用して生み出したものであり、日本独自の工芸品と言える。
洋館
ジョサイア・コンドルの設計により、明治29(1896)年に完成しました。
17世紀の英国ジャコビアン様式の見事な装飾が随所に見られ、イギリス・ルネサンス様式やイスラム風のモティーフなどが採り入れられています。洋館南側は列柱の並ぶベランダで、1階列柱はトスカナ式、2階列柱はイオニア式の特徴を持っています。また、1階のベランダには、英国ミントン社製のタイルが目地無く敷き詰められ、2階には貴重な金唐革紙の壁紙が貼られた客室もあります。岩崎久彌の留学先である米国ペンシルヴァニアのカントリーハウスのイメージも採り入れられました。併置された和館との巧みなバランスは、世界の住宅史においても希有の建築とされています。往時は、主に年1回の岩崎家の集まりや外国人、賓客を招いてのパーティーなどプライベートな迎賓館として使用されました。
大階段
1階ホールから2階へと続く大階段は、支柱のない構造となっている。ホールにある一対の化粧柱、華麗なアカンサス風の花模様で装飾された手摺が設けられている。また、地階へ続く階段は螺旋階段となっている。
ベランダ
南側1、2階には、コロニアル様式の大規模な二層のベランダが設けられている。1階にトスカナ式の列柱、2階にイオニア式の列柱が立っている。床には多色象嵌のビクトリアン・タイルが、―面に敷き詰められている。
サンルーム
明治後期に増築されたといわれる東側のサンルーム。室内から台形に角度をもって張り出したベイウィンドーがデザインに採り入れられている。館内には暖炉、スチームがあるが、サンルームには暖房を補う役割もあった。
和館
洋館に併置された和館は、書院造りを基調にしています。完成当時は建坪550坪に及び、洋館を遥かにしのぐ規模を誇っていました。現在は、冠婚葬祭などに使われた大広間の1棟だけが残っています。施工は大工棟粱として、政財界の大立者たちの屋敷を数多く手がけた大河喜十郎と伝えられています。
床の間や襖には、橋本雅邦が下絵を描いたと伝えられる障壁画が残っています。今は失われた岩崎家の居住空間は、南北に分けられ、南に久彌と寧子夫人の部屋、子ども部屋などが置かれていました。北には使用人部屋、台所、事務方詰所、倉庫などがありました。
撞球室
コンドル設計の撞球室(ビリヤード場)は、洋館から少し離れた位置に別棟として建っています。ジャコビアン様式の洋館とは異なり、当時の日本では非常に珍しいスイスの山小屋風の造りとなっています。全体は木造建築で、校倉造り風の壁、刻みの入った柱、軒を深く差し出した大屋根など、アメリカの木造ゴシックの流れを汲むデザインです。洋館から地下通路でつながっていて、内部には貴重な金唐革紙の壁紙が貼られています。
Photo by GION
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