ふだん使いで楽しみたい、本つげのヘアアクセサリー
2023.03.29
LIFEよのや櫛舗が2019年に発表した「KIJI COLLECTION」。本つげ櫛の専門店による、ヘアアクセサリーのシリーズだ。同時につくられたスタイルブックでは、和装だけでなく、スーツやパーティドレスなど、現代の洋装を美しく引き立てるコーディネートが紹介されて評判を呼んだ。
「本つげの魅力を身近に感じながら、一生ものとして使っていただけるヘアアクセサリーをご提案したいと思いました」と語るのは、当代の斎藤悠さんと共に店を切り盛りする妻の有都さん。つげ櫛づくりの際に出る端材を使った髪飾りの製作は、昭和の終わり頃から行っていたが、和装をする女性が少なくなって需要が減り、平成末には彫りの細工ができる職人も高齢化で激減してしまったという。このままでは本つげの髪飾りが途絶えてしまうと危惧した斎藤さん夫妻は、材料を確保し、職人も探し出して復活にこぎつけた。
「今回のコレクションは、サイズを小さくしたり金具を大きめにしたりと、今の時代に合わせて使いやすくブラッシュアップしました」と語る有都さん。頭の形に自然にフィットするよう、すべての商品にカーブをつけることにもこだわった。本つげのよさは、丈夫さと弾力性を兼ね備えていることだが、それゆえ加工が難しい。繊細な透かし細工は、熟練の職人技の賜物だ。さらに、加工後はツヤツヤに磨き上げ、緻密な木目をより美しく浮かび上がらせている。
数あるコレクションの中でも、一本脚へら型の簪は有都さん自身も愛用する品。髪をシニヨンやハーフアップにさっとまとめた後に挿すと、唐草模様の透かし細工がアクセントとなってバランスよく決まるという。
「無地のシンプルなひょうたん型バレッタやU字の簪なども、シーンを選ばず使えると好評です。モンステラのバレッタはエキゾチックな雰囲気が人気。唐草模様の棒留めは、華やかなので結婚式やパーティにもおすすめです」
コレクションに出会った女性たちに共通した反響は、「自分たちには縁遠いと思っていたけど、ふだん使いができる!」という驚きだという。本つげは使い込んでいくうちに飴色に変化していくため、愛でて育てる楽しみがあるという声も多い。
「毎日使う道具ですから、心地よく長く使ってもらえたら何よりうれしい。今後も、本つげのよさを活かすという“変えてはいけないもの”にこだわりつつ、時代に合わせて“変えるべきもの”を提案していきたいと思います」
写真撮影:ブラボーワークス(株)