時代の変遷と向き合いながら “職商人”としての姿勢を続けたい。

時代の変遷と向き合いながら “職商人”としての姿勢を続けたい。

1783年に創業し、各種刃物の製造と販売を行ってきたうぶけや。八代目当主の矢崎豊さんに人々と刃物の関わり方が時代と共にどのように変化してきたかを伺った。

「昔はどこのお家にも必ず、花鋏(はさみ)や握り鋏、糸切り鋏などがありましたよね。最近そういうものがなくなってきているのは、日常使う道具が変化しているということです。今の時代にこうした刃物を売って生計を立てるために、例えば『握り鋏は10万円』とすると、それはもう道具の値段ではなくなってしまう。私たちが扱っているのはあくまでも道具であって、美術骨董品ではありません。ですから値段ではないところで、もっと刃物という道具の価値を、海外も含めて幅広く紹介することも、私の刃物屋としての役割なのかもしれないと思っています」

時代の変遷と向き合いながら “職商人”としての姿勢を続けたい。

うぶけやでは自ら加工した商品を店舗で販売するだけではなく、刃物全般の修理も行うという昔ながらの“職商人”スタイルで2代目以降営業を続けてきた。やってくるのは老若男女を問わず、代々通い続けているお客様が多いそうで、中には祖母の嫁入り道具だった裁ち鋏を研いで欲しいと、孫が訪れるケースもある。

最近では刃物の機能美に惹かれて店を訪れる人もいるそうだ。自らの手で加工、販売した商品の感想や要望を、お客様から直接聞くことで、職人としての仕事はさらに洗練されていくんだそう。

「これからどんな道具が廃れて、どんな道具が出てくるかは分かりませんが、その時代の道具に合わせて、職商人としての姿勢をこれからも続けられたらいいですね」

時代の変遷と向き合いながら “職商人”としての姿勢を続けたい。