価値の伝承と新たなマーケットへの挑戦。

価値の伝承と新たなマーケットへの挑戦。

ガラス食器問屋として浅草で創業し、80年以上にわたってマーケットの最前線を見つめてきた木本硝子。問屋ならではの視点を活かしながら、現在のライフスタイルに合った製品を次々と生み出し注目を集めている。そんな木本硝子がいま力を注いでいるのが海外展開だ。三代目で代表取締役社長の木本誠一さんにその手法を伺った。

価値の伝承と新たなマーケットへの挑戦。

北米、ヨーロッパ、アジアなど昨年1年間で訪れた国は10カ国以上。各国で木本さんが売り込んでいるのは、自社の硝子製品だけではない。「今の時代、硝子だけを持って行っても誰も買いません。だから、食事に合う日本酒やその日本酒に合うグラスを提案しています。そこに日本の歴史観とか、職人文化の話をプラスするのがポイントです」

木本さんが商談をするのは、三ツ星のレストランや五つ星のホテルといったハイエンドの店に限っているという。「日本の酒も料理も器も、とても価値がある。その価値を知ってもらわないと勿体ないと思います。ハイエンドな店を利用するお客さんたちは世界中のおいしい料理を食べて、おしいお酒を知っていて、良い器に触れている。だからいいものの価値は必ず伝わるはずです」

この言葉の通り、昨年訪れた国のほとんどのレストランやホテルが、木本硝子を採用してくれたという。木本さんがハイエンドクラスにこだわるのは、職人の賃金が安く、後継者が不足していることが背景にある。「きちんと価値を伝えて、その価値に見合った価格で売れば、適正な報酬で職人に仕事が回ります。そうすることで後継者不足の解消につなげたいのです」

そう語る木本さんに今後の展望を伺うと、「今年の夏は南米に行きたい。そうすれば6大陸制覇になるんです」。問屋として日本の伝統技術に敬意を払いながら、これからも新たなマーケットを開拓し続ける。

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