【江戸東京リシンク展】木目金 杢目金屋「いにしえの技を、生きた技術に変える」【江戸東京リシンク展】木目金 杢目金屋「いにしえの技を、生きた技術に変える」

【江戸東京リシンク展】木目金 杢目金屋「いにしえの技を、生きた技術に変える」

江戸時代に生まれた金属加工技術「木目金」。
刀の鐔(つば)といった刀装具だけでなく、幕末から明治にかけては、煙管(きせる)、茶道具、海外への輸出工芸品にも用いられるようになっていく。

しかし、明治期以降、その技術は次第に影を潜めることになった。

明確な理由は定かではないが、廃刀令によって刀の需要が減少したことも大きかったのだろう。そもそも彫金と鍛金双方の知見を要する技術の修得は難しく、次第に作り手も減少していったようだ。

【江戸東京リシンク展】木目金 杢目金屋「いにしえの技を、生きた技術に変える」

もちろん、完全に途絶えたわけではない。
明治から令和に至るまで、少数ではあるが、技術の復興、存続に尽力した人々によって、今日までその伝統は守られてきた。

1997年創業の杢目金屋代表の髙橋正樹氏もその一人だ。
東京藝術大学大学院時代に木目金に魅せられた髙橋氏は、実業として木目金の技術を使ったジュエリーを手がけるだけでなく、2003年には特定非営利活動法人「日本杢目金研究所」を立ち上げ、研究を続けている。

技術や歴史について体系的にまとめられたものはほとんどなく、資料も散逸しているような状態からスタートした氏は「用の美」、すなわちテクニックの復元ではなく、プロダクトとして成立させることを意識しているという。

【江戸東京リシンク展】木目金 杢目金屋「いにしえの技を、生きた技術に変える」

「今の時代に求められているものを作る。その手段として『伝統技術』が存在するという順番で物事を考えていかないと、『生きた技術』にはならないと思っています。そのためには、過去の技術、作品を研究、復元する研究所と、ジュエリーを制作する杢目金屋はどちらも必要なものであり、手段と目的が一緒になっていると言ってもよいかもしれません」

そのため、杢目金屋のジュエリーは、日本から生まれた技術を使いつつも、ことさらに日本的要素を強調するのではなく、それを身につける人たちの関係性をデザインすることに主眼が置かれている。

研究と制作を続ける中で、木目金という技術を「先人から託してもらった」という思いが強くなっていったという髙橋氏。
『江戸東京リシンク展』では、現代美術家である舘鼻則孝氏とのコラボレーションも予定している。衰退と復活とを繰り返しながら、江戸から令和まで続いた技は、アート作品と一体となり、どんな光を放つことになるのだろうか。

【江戸東京リシンク展】木目金 杢目金屋「いにしえの技を、生きた技術に変える」

Photo by Satomi Yamauchi

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、十分な感染対策を講じて取材を行なっております。


オンライン開催概要
【展覧会名】 江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
【開催期間】 2022年3月24日(木) 14:00 〜 3月31日(木)
※オンライン開催期間終了後もアーカイブとして同URLにて閲覧可能です。
【主  催】 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
【共  催】 公益財団法人東京都公園協会

【参加事業者】
小町紅 伊勢半本店、江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、江戸木目込人形 松崎人形、和太鼓 宮本卯之助商店、木目金 杢目金屋、東京くみひも 龍工房、金唐紙研究所(特別協力)


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