【江戸東京リシンク展】江戸切子 華硝「思った通りにならないことを楽しむ」
2022.03.11
LIFE江戸末期の日本橋にルーツを持つ「江戸切子」。
戦後すぐに亀戸に工房を設立したのが、華硝の初代・熊倉茂吉氏だ。
その後、2代目夫婦の熊倉隆一氏、節子氏はOEMではない「独自のものづくり」を始め、2008年には、北海道洞爺湖サミットの贈答品に選ばれるなど、国内外に江戸切子の伝統を発信し続けている。
そうした華硝の伝統を引き継ぐ3代目・熊倉隆行氏は、今後の江戸切子のあり方をどう考えているのだろうか。現代美術家・舘鼻則孝氏と華硝とのコラボレーション作品の打ち合わせの席上で尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。
「伝統の技を守りながらも、その伝統で自分たちを縛りたくないと思っています。私はあくまで伝統の通過点に過ぎません。これからの人たちが『江戸切子』に向き合いやすい土壌をつくるためにも、自由度を高くしておきたいのです」
そう語る隆行氏は、ベースを作るガラス職人からの提案はまずは受け入れるようにしているという。細かく仕様を決定して、その通りに作ってもらうなら、相手は「機械」になってしまうからだ。
「ガラスは生き物みたいなもので、思った通りにいかないことのほうが多い。だからこそ、相手の感性を潰さずに、一発勝負を楽しみたい。信頼関係ができれば、細かなことを言わないでも、お互いに最適解を見つけることができるようになります」
コラボレーション作品に使用するガラスの大きさ、色味、曲線の具合など、打ち合わせではさまざまなことが話し合われたが、きっと最後は一発勝負となるのだろう。両者の感性がぶつかり合うことで生まれる作品づくりは、2022年3月の展覧会に向けて佳境を迎えている。
Photo by Satomi Yamauchi
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、十分な感染対策を講じて取材を行なっております。
オンライン開催概要
【展覧会名】 江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
【開催期間】 2022年3月24日(木) 14:00 〜 3月31日(木)
※オンライン開催期間終了後もアーカイブとして同URLにて閲覧可能です。
【主 催】 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
【共 催】 公益財団法人東京都公園協会
【参加事業者】
小町紅 伊勢半本店、江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、江戸木目込人形 松崎人形、和太鼓 宮本卯之助商店、木目金 杢目金屋、東京くみひも 龍工房、金唐紙研究所(特別協力)