【江戸東京リシンク展】江戸木版画 高橋工房「明治の月を令和に眺める」
2022.03.07
LIFE“Reviving Yoshitoshi’s Moon”――。
2021年3月18日、幕末から明治期に活躍し、「最後の浮世絵師」と呼ばれた月岡芳年の代表作『月百姿』の古版木修復、摺りの再現についてのウェビナーが、ロンドンの大英博物館、在英国日本国大使館、そして東京の文京区にある高橋工房とをつないで行なわれた。
高橋工房とロンドンとは縁が深い。6代目当主の高橋由貴子氏が、経済産業省の補助金事業プロジェクトでロンドンのミュージアムショップのマーケティングリサーチを担当したのがきっかけで、その後、大英博物館で開催された“Hokusai Beyond the great wave”展では講演、実演を行なうなど、何度も足を運んでいる。
今回も当初は現地での開催が模索されたが、コロナ禍ということもあり、リモート開催となった。それでも、オンラインで参加できるとあって、日本、イギリスだけでなく、世界中から参加者が集まり、制限時間内には答えられないほどの質問が届いたという。
浮世絵は日本人が感じている以上に海外で知られており、江戸木版画の技術が令和の時代まで脈々と受け継がれていることへの評価も高い。葛飾北斎の冨嶽三十六景『神奈川沖浪裏』などは、レオナルド・ダ・ヴィンチが描いた『モナ・リザ』と一緒に教科書で紹介されている国もあるそうだ。
昔から夜空に浮かぶ月に話しかけるほどに、月を愛してやまない高橋氏。
思いがけず、『月百夜』の古版木が手元に巡ってきたときは、運命としか言いようがないと感じたそうだ。修復された作品の楽しみ方を伺うと、次のような答えが返ってきた。
「浮世絵は『見る』ものではなく、『読む』ものといわれています。芳年の作品にも、画面に描かれているものだけでなく、その背景にさまざまな意味やストーリーが潜んでいます。ぜひ、その物語を読み解きながら鑑賞してもらえればと思います」
2022年3月に行なわれる「江戸東京リシンク展」では、現代美術家の舘鼻則孝氏、さらには「小町紅 伊勢半本店」の三者でのコラボレーションを予定している高橋工房。江戸時代に「金の如く」と称された「細工紅」を使った浮世絵は、令和の時代にどのような形で蘇るのだろうか。
Photo by Satomi Yamauchi
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、十分な感染対策を講じて取材を行なっております。
オンライン開催概要
【展覧会名】 江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
【開催期間】 2022年3月24日(木) 14:00 〜 3月31日(木)
※オンライン開催期間終了後もアーカイブとして同URLにて閲覧可能です。
【主 催】 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
【共 催】 公益財団法人東京都公園協会
【参加事業者】
小町紅 伊勢半本店、江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、江戸木目込人形 松崎人形、和太鼓 宮本卯之助商店、木目金 杢目金屋、東京くみひも 龍工房、金唐紙研究所(特別協力)