【江戸東京リシンク展】東京くみひも 龍工房「過去と未来が交錯する組紐の魅力」
2022.03.07
LIFE昨年の「江戸東京リシンク展」で、現代美術家・舘鼻則孝氏とコラボレーションを果たした龍工房の組紐。その作品は、「伝統的な工芸技法を用いたうえで革新的な表現をしている」点を評価され、ロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館に収蔵されることになった――。
あれから1年、今年も展覧会に参加する龍工房の福田隆太氏を訪れると、「今、何を組んでいると思いますか」と開口一番。
「水と空気以外ならなんでも組める」と考え、常に組紐の新しい可能性を探している隆太氏が現在挑戦しているのは、レザー(皮革)を使った革組紐だ。幅わずか数ミリのレザーと絹糸が“組み成す”グラデーションは、息をのむほどの美しさとしなやかさを兼ね備えている。
続けて隆太氏は、来年度スタートする予定の「江戸で養蚕の会」について教えてくれた。その背景には、組紐に欠かすことのできない生糸を生産する養蚕農家が減少していることへの危機感があるという。農林水産省の資料(新蚕業プロジェクト方針)によれば、1929(昭和4)年には221万戸あった農家は、すでに300戸を下回り、国産生糸のシェアは0.2%となっている。
そこで、まずは日本橋の子供たちに生糸のことを知ってもらいたいと考え、現代の名工の称号を持つ父の隆氏と一緒にプロジェクトを発案。生産者をはじめとする関係者に協力をお願いして回ったところ、みな快く引き受けてくれたそうだ。
帰り際、町内会長でもある隆氏が「火の用心の夜回りの時期に、お菓子の詰め合わせを用意すると、子供たちが喜んでくれる」と言いながら打った拍子木の音が空に響く。大人から子供へ、現在から未来へと伝統を紡いできた「日本橋」という土地の歴史の一端を垣間見た気がした。
今年の「江戸東京リシンク展」でも舘鼻氏とコラボレーションを予定している龍工房。使用する組紐の種類が増えれば増えるほど、制作の難易度は増すことになるが、作品づくりの打ち合わせで隆太氏は「出せる力はすべて出し切りたい」と意気込みを語っていた。その挑戦の連続があってこそ、組紐の技術は現代まで途絶えることなく、進化を続けてきたのだろう。
Photo by Satomi Yamauchi
*Top image: Photo by GION
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、十分な感染対策を講じて取材を行なっております。
オンライン開催概要
【展覧会名】 江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
【開催期間】 2022年3月24日(木) 14:00 〜 3月31日(木)
※オンライン開催期間終了後もアーカイブとして同URLにて閲覧可能です。
【主 催】 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
【共 催】 公益財団法人東京都公園協会
【参加事業者】
小町紅 伊勢半本店、江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、江戸木目込人形 松崎人形、和太鼓 宮本卯之助商店、木目金 杢目金屋、東京くみひも 龍工房、金唐紙研究所(特別協力)