【江戸東京リシンク展】江戸木目込人形 松崎人形「用途のないものに宿る価値」【江戸東京リシンク展】江戸木目込人形 松崎人形「用途のないものに宿る価値」

【江戸東京リシンク展】江戸木目込人形 松崎人形「用途のないものに宿る価値」

【江戸東京リシンク展】江戸木目込人形 松崎人形「用途のないものに宿る価値」

工房に併設されたショールームに並ぶ、思い思いの顔立ちをしたひな人形、五月人形――。

「江戸木目込人形」と「江戸節句人形」(江戸衣裳着人形)という2つの伝統的工芸品を扱う松崎人形では、人形の雰囲気を決定づける「頭」(かしら)をはじめとして、ほぼすべての工程を工房内で手がけている。そうした総合的なものづくりから生まれる人形の「表情」に惹かれて工房を訪ねてくる人が後を絶たないという。

創業は1920(大正9)年。初代から数えて三代目となる松崎光正氏は、「幸一光」を名乗っているが、もともと家業を継ぐつもりはなかったそうだ。美術大学で彫刻を学んでいたこともあり、動物や虫をテーマにした新レーベルを立ち上げるなど、形へのこだわり、新しいものを創作することへの思いは強い。

「人形づくりにおいて、変えてはいけないもの、守らなければならないものは何一つないと思っています。伝統の人形づくりにおいても、ただ漫然とつくるのではなく、こういう表情にしたらどうだろうかと、一体一体の人形と向き合いながら作り続けています」

【江戸東京リシンク展】江戸木目込人形 松崎人形「用途のないものに宿る価値」

工房で接客をする機会の多い次代の篤氏は、コロナ禍を通して、人形のもつ価値が改めて見直されていることを実感している。

「お子さんやお孫さんのためにと本当に楽しそうにお人形をご覧になっているお姿を拝見するにつけ、飾るという行為だけでなく、選ぶ行為そのものの価値が高まっていると感じています」

「お人形そのものに用途はないからこそ、生まれる価値がある」と考える光正氏も次のように語る。

「修理にいらっしゃった方に『頭が汚れているので、新しいものに替えましょうか』とご提案しても、多くの方が『いいえ。そのままにしてください』とおっしゃいます。お人形というのは、ご家族のお気持ちや願いと一緒に過ごした年月の分だけ大切な存在になっていくのではないでしょうか」

【江戸東京リシンク展】江戸木目込人形 松崎人形「用途のないものに宿る価値」

「江戸東京リシンク展」では、現代美術家の舘鼻則孝氏と共に、旧岩崎邸で飾られていた雛人形の色味の再現に挑戦する。現物が残っていないため、手がかりとなるのは、モノクロ写真のみ。明治の人々を楽しませた人形は令和の私たちの目にどのように映るのだろうか。

Photo by Satomi Yamauchi

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、十分な感染対策を講じて取材を行なっております。


オンライン開催概要
【展覧会名】 江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
【開催期間】 2022年3月24日(木) 14:00 〜 3月31日(木)
※オンライン開催期間終了後もアーカイブとして同URLにて閲覧可能です。
【主  催】 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
【共  催】 公益財団法人東京都公園協会

【参加事業者】
小町紅 伊勢半本店、江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、江戸木目込人形 松崎人形、和太鼓 宮本卯之助商店、木目金 杢目金屋、東京くみひも 龍工房、金唐紙研究所(特別協力)


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