【江戸東京リシンク展】金唐紙研究所「幻の技術を未来につなぐ」【江戸東京リシンク展】金唐紙研究所「幻の技術を未来につなぐ」

【江戸東京リシンク展】金唐紙研究所「幻の技術を未来につなぐ」

【江戸東京リシンク展】金唐紙研究所「幻の技術を未来につなぐ」

「100年の空白を埋めるような作業で、ずいぶんと脱線をしながら試行錯誤を続けました」

1906(明治39)年に完成した重要文化財「旧日本郵船株式会社小樽支店」に使用されている金唐革紙修復に尽力し、今なお第一線で修理・復元作業を続ける上田尚氏(金唐紙研究所代表)は、当時のことを振り返りながらそう語った。

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金唐革紙のルーツは、中世ヨーロッパのギルトレザー(金唐革)にあり、1700年代には、あの平賀源内も金唐革紙つくりに挑戦したと言われている。
その後、幕末から明治期にかけて大成し、「江戸東京リシンク展」の会場となる重要文化財「旧岩崎邸庭園」をはじめとする日本各地の建築に用いられただけでなく、海外にも盛んに輸出されていった。

しかし、上田氏が復元作業を開始したころには、技術が大成してから100年程度経っており、文献などもほとんど残っていない「幻の技術」となっていたという。

そのため、東京文化財研究所の協力を得ながら、明治期に日本を訪れたイギリスの実業家チャールズ・ホーム、フランスの挿絵画家フェリックス・レガメが残した製造工程のスケッチなどを参考に、製法だけでなく、和紙の選定から刷毛(はけ)の素材に至るまで、ゼロから構築し直す必要があった。

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京友禅の家に生まれ、もともとは金箔や和紙を使った特殊印刷に精通した出版人だった上田氏が、40年近くも金唐革紙に向き合う原動力となったのは、研究のために旅したオランダでの経験だった。
ハーグにある養老院などで、人々の心を癒し、和ませるものとして金唐革が存在していることを目の当たりにし、日本でも復興させたいという夢を抱いたという。

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そうしたロマンに駆り立てられ、日本各地の金唐革紙の修復を続けてきた上田氏は、現代美術家である舘鼻則孝氏とのコラボレーションに次のような期待を寄せている。

「次代につなぐためには、新しいデザイン、新しいセンスによって、新しいものを作らなければなりません。甦った技術がアート作品の一部となり、未来につながるきっかけとなることを願っています」

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Photo courtesy of NORITAKA TATEHANA K.K.

※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、十分な感染対策を講じて取材を行なっております。


オンライン開催概要
【展覧会名】 江戸東京リシンク展 -旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
【開催期間】 2022年3月24日(木) 14:00 〜 3月31日(木)
※オンライン開催期間終了後もアーカイブとして同URLにて閲覧可能です。
【主  催】 東京都・江戸東京きらりプロジェクト
【共  催】 公益財団法人東京都公園協会

【参加事業者】
小町紅 伊勢半本店、江戸木版画 高橋工房、江戸切子 華硝、江戸木目込人形 松崎人形、和太鼓 宮本卯之助商店、木目金 杢目金屋、東京くみひも 龍工房、金唐紙研究所(特別協力)


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