もっと「書」を日常に。キャレモジが提案するインテリアの新たな選択肢もっと「書」を日常に。キャレモジが提案するインテリアの新たな選択肢

もっと「書」を日常に。キャレモジが提案するインテリアの新たな選択肢

「初めてキャレモジが扱う作品を見たときは、衝撃的でした。わたし自身も趣味で書道を続けていたのですが、ただ先生のお手本どおりに制作していた自分の書道と違い、表情があり、情景が広がる書だったのです。作品にマッチしたモダンな額装デザインも素晴らしく、書をこうしてインテリアとして飾ることができるんだと驚いたと同時に、これを広める仕事がしたい!と強く感じました」

そう語るのは、キャレモジのシニアマネージャーでありインテリアコーディネーターでもある髙橋恵美さん。伝統文化である書をインテリアアートとして提案する日本唯一のギャラリー兼プロダクションである同社に入社して、もう16年ほどになります。以前は全く異なる仕事をしていましたが、ここでの仕事を通して興味をもち、インテリアコーディネーターの資格も取得しました。そこには、キャレモジのコンセプトを追求したいという思いがあったといいます。

「インテリアにしたくなる書の提案をすることが、キャレモジの役割です。他のコーディネーターたちと仕事をする中で、もっと彼らの希望を汲み取れるようになりたいと思い、インテリア全般について学びました。わたしの仕事としては書を飾る壁面のコーディネートですが、たとえば作品に施す額装についても、それが飾られる空間全体のバランスを考えたうえでデザイナーに依頼するようにしています」

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コンクリートの壁面と赤銅(赤い墨)のコラージュが印象的な作品。「飾った瞬間にお部屋にぴたりときた感覚がありました」(清水恵「華」/個人宅)


キャレモジでは、顧客の希望に応じて作品を制作するオーダーメイドが全体の半分を超えます。その依頼内容は実にさまざまで、文字や書家を指名される場合もあれば、そこから提案することも。依頼主とのコミュニケーションを重ねて、その人の頭の中にあるイメージを引き出し、噛み砕いて書家に伝えるのが、髙橋さんの重要な役目です。

なかでも印象に残っているのは、「適当」という文字でのオーダー。依頼主は医師で、間違いの許されない緊張の日々を送る中で、家では程よく力が抜けるようなものに触れたい、との思いがあったそう。そこで髙橋さんは、癒しと温かみのある作品を得意とする書家に依頼。文字の意味としてだけでなく、作品として依頼主の気持ちに寄り添うことができたといいます。

「現在キャレモジには12名の書家が所属しています。作品としての完成度を追求するのはもちろんですが、依頼を受けて制作するという立場上、さまざまな顧客の多様な依頼に応える必要があります。そのために、それぞれの書家が最大限の力を発揮でき、気持ちよく制作できる得意分野を見極めることも重要だと考えています」

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キャレモジでシニアマネージャーを務める髙橋恵美さん。自身も書道に取り組む中でキャレモジの「飾る書」に出会い、今ではインテリアコーディネーターとして空間全体のプロデュースを心がける。


時には依頼主の家を訪ねて、より空間を生かすためのサイズや配置を提案することも。候補となる作品を数点持ち込み、飾る予定の壁面にあててみて相談するなど、依頼主が心から満足できる空間作りを心がけています。さらには、出来上がった作品を実際に設置する場に立ち合うこともあると言い、何度やっても緊張の瞬間であるそう。

2014年には、世界的なラグジュアリーホテルとして知られるアマン東京の客室を飾る作品制作を担当。このプロジェクトは、飾る書道作品を世界に発信していくキャレモジにとって大きな転換点となったと髙橋さんは振り返ります。コロナ禍が落ち着いてからは、海外からもギャラリーを訪れる人が増えているのだとか。

「書がほしいけれど書家に直接依頼するのは難しいと感じていた方や、多くの書家が所属していることで依頼しやすい、といった声も聞かれます」

かつては床の間に掛け軸を飾っていた日本家屋も、生活様式が変わり、日常空間から「書」が遠ざかっているのは事実。しかし意外にも、墨で書かれた書は、どんな空間にも合うのだと髙橋さんは言います。

「海外の顧客から自宅に書を飾った写真を送っていただくのですが、北欧スタイルやミックススタイル、ヨーロピアンな空間にもマッチしています。墨や線の魅力、それに余白の力が、見る人の気持ちの移り変わりなどを受け止めてくれるからではないかな、と感じます。ぜひ小さなものからでも、書を飾る日常の心地よさを多くの人に味わってほしいですね」

もっと「書」を日常に。キャレモジが提案するインテリアの新たな選択肢
左:アメリカの広々とした住宅にも、書は違和感なく溶け込む(宮村弦「The Universe – 始まり」/個人宅)。右:額装の金箔が目を引く。同じ文字でもサイズや額装デザインによって、すべてが一点物となる(宮村弦「心」/個人宅)


キャレモジでは現在、海外からの問い合わせが増加していることを受けて、海外で開かれる展示会などにも積極的に参加しています。髙橋さんもそうした場所に出向いては、反響の大きさを実感しているといいます。また、海外向けウェブサイトのリニューアルに向けて、海外の人たちにもより伝わる文章や画像などを模索しているそう。

「実際に海外で作品を見ていただく機会も増やしていきたいですし、書を飾る心地よさと素晴らしさを多くの方に知っていただきたい。そうやって海外で広く浸透していく中で、いずれ逆輸入のような形で、日本の方にも今以上に知られるようになったら面白いなと思っています」

書の世界に可能性を見いだしたキャレモジと髙橋さん。世界中に彩りをもたらす挑戦へと旅立ったばかりです。