
海苔の魅力を広げる山本海苔店の新たな挑戦
2026.03.11
FOOD山本海苔店は1849年、日本橋室町一丁目に創業し、1869年に明治天皇が京都へ還幸される際の土産として「味附海苔」を初めて作りました。これを機に宮内庁御用達となり、東京を代表する海苔専門店としての地位を確立しました。看板商品である「梅の花」はお中元やお歳暮など昭和の贈答品需要を追い風に人気を博しました。

山本海苔店は2018年から江戸東京きらりプロジェクトに参加し、有識者や専門家の意見を取り入れて海外向けリーフレットを作成するなど、同プロジェクトで始めたブランドイメージの再構築は現在も継続的に取り組んでいます。「私が社長に就任する前からブランドイメージの統一については検討を重ねてきました。数種類あった『山本海苔店』の文字を一つに集約し、伝統を大切にしながらブラッシュアップを図りました」。例えば「紅梅(焼海苔・味附海苔)」や、「銘々焼海苔」「銘々味附海苔」のパッケージに見られるように、1902年から続く「まるうめマーク」の書体をすっきりとさせ、それまで「山本海苔店」のロゴとセットになっていたのを離してデザインしたところ、現代的でスマートな印象に仕上がりました。

また、山本海苔店が時代の変化に合わせて行うさまざまな改革の一つに、販路の拡大があげられます。「中元・歳暮の市場規模が1980年代のバブル期から7割落ち込むなか、買い求めやすい価格帯の商品とパッケージを開発し、駅、空港、サービスエリア、テーマパークなどへ売り場を拡大しました。個包装や季節に合わせた掛け紙、キャラクターとのコラボ商品を作り、お土産商品のラインナップを充実させ、年間を通してお客様の購入の機会を逃さないようにしました」。


2025年11月には日本橋の再開発にともない近隣に本店が移転しました。山本さんが焼きたての海苔のおいしさをより多くの人に知ってもらいたいと、新本店内に開業したのが山本海苔店初となる飲食店「手巻き YAMAMOTO」です。注文を受けてからお客様の目の前で焼き上げられる「梅の花」の海苔と、おひつに入ったご飯、そして12種類の具材が提供されます。店内のカウンターで楽しめるのは、2種類の手巻きセット。「日本橋ゆかり」の野永喜三夫さんと、「おにぎり ぼんご」の右近由美子さんそれぞれのレシピ監修による異なる具材のセットメニューです。香り高い海苔を贅沢に楽しめると、早くも連日多くの客で賑わっています。

「海苔にはさまざまなランクがありますが、山本海苔店が提供する海苔はサクッとした歯応えと口溶けの良さで、一線を画すおいしさです。有明海で古くから行われている支柱式と呼ばれる養殖方法で最高級の海苔を作る漁師さんを守り、上質な海苔のおいしさを多くのお客様にお届けするために、デザインや新商品、販売形態などを工夫し、現代のニーズに応えながら邁進していきたいと考えています」。
再開発地区の完成予定とされる6年後には再び創業の地で一層羽ばたけることを楽しみにしていると貴大さんは言います。再生を遂げる日本橋から、新たな取り組みで海苔の魅力を伝えている山本海苔店。より多くの国内外のお客様にその魅力を届け、老舗の確かな品質を守りつつ、伝統を未来につなげているのです。