日本人として「何のプロなのか?」を意識することが大切。
2019.09.09
FOOD〜 世界のなかの日本の「食」 〜
ただ情報を発信するだけではなく
自らの立場を明確にしたい
総本家 更科堀井・九代目の堀井良教さんに、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けた展望について伺った。外国から日本を訪れた方々に、日本の国の文化や食について伝えるチャンスなのだろうか? 堀井さんはこう語る。「元々ウチは外国人のお客様が多いですし、私もよく海外に行っています。ですから社員も外国の方への対応は慣れていますし、歓迎する土壌はあると思います。みんないろいろな国の人と接することが楽しいんだと思いますよ」
日本料理アカデミーでも、海外との交流が盛んに行われている。また、総本家 更科堀井も、すでにニューヨークへの出店が決まっている。
「ただ日本のものを海外へ持って行って漠然と伝えるのではなく、本物を伝えたいという気持ちや使命感が、アカデミーのメンバーにもあると思います。志として、自分が日本人として『何のプロなのか?』というものを明確にしながら取り組みたいと、みんな考えているんです。しっかりと自らが依って立つ立場を意識した上で、発信していく。そのことが大切だと思います」
堀井さんは、食のプロ、そばのプロとして相手に物事を伝える時に、味はもちろん、栄養価の高さなども合わせて伝えていきたいという。「どうしてそばつゆは旨味が強いのかなど、知識として届けることも大切にしたいです。一般的に世界中の料理は、脂肪と糖分によって脳内に心地よいと感じさせるドーパミンが放出されるが、和食の場合は旨味によってドーパミンが出ます。つまり脂肪や糖分を抑えても、満足感が得られるんです。和食は、そういった理由からもユネスコ無形文化遺産にも登録された健康的な食文化なんです。そばつゆは、鰹節を長時間、煮詰めた濃厚な凝縮出汁をベースにしています。また、そばは血糖値の上昇率を表すGI値が低いのも特長です。そうした知識を的確に伝えていくことも重要ですね」
アフリカのコンゴという国に、そばを植える取り組みも行っているという。「そばはタンパク質のバランスがいいため、少ない量でも栄養が摂れる。なぜ体にいいのかなど、その国の現状に合わせて、しっかりと科学的に説明してあげることも大切だと思います」と堀井さん。そのことによって世界中の人々が幸せになれたらいいと語った。