組紐が未来に対して できることはたくさんある。
2019.12.10
FASHION伝統と革新の先にある、モノづくりを目指して
伝統的な和装の帯締めをつくる一方で、組紐を生かした新しい商品のプロデュースも手がける龍工房。傘に鞄、ペン、そして燕三条の金物職人たちと協業して椅子をつくるなど、「用と美」を兼ね備えた作品を世に送り出している。「新しいことに挑戦したり、他分野の人たちと協業したりできるのは幸せなこと。用と美の2軸を兼ね備えていくことが、これからの組紐には大切だと感じています」と話すのは三代目・福田隆太さんだ。
「伝統と革新が融合したその先にある未来に向かって、ものづくりに励んでいます。たとえば、組む素材はずっと正絹でしたが、今ではニッケル銅線やアクリル、不燃糸、反射撚糸などを組むこともあります。伝統的な技術で進化した素材を組むと、新しいものを生み出すことができる。この一つひとつに無限の可能性を感じ、ワクワクしながら仕事に取り組んでいます」と隆太さんは語る。
それぞれの組紐には、さまざまな歴史やストーリーがある。晴れ着などの祝事にふさわしいものもあれば、武具甲冑に使われた勝負事によいものなど、使う人にあわせて、組紐の物語を丁寧に伝えている。丸紐や平紐などを用途に合わせて提案ができるのも、染色から一貫して製造し、すべての組み台を扱える龍工房ならではのことだ。
現在隆太さんが取り組んでいるのが、丸紐が途中から平紐に変わり柄が変化するストラップだ。「糸量は一切変えずに、約8回の組替わりを経て流線型の形を作り出す。この5cm幅の中に技術が詰め込まれています」。数センチの中に、技術と魂を込めたものづくりの新しい可能性が表現されている。「技術があるからこそ、未来に対してできることがあります。組紐の今を見つめ直し、身近な『粋』として使ってもらえるように、できることはたくさんあると思います」と、隆太さんは力強く語った。