浴衣と和菓子に共通する、季節感という日本らしさ

浴衣と和菓子に共通する、季節感という日本らしさ

四季の移ろいを敏感に感じ取り、暮らしの随所に季節感を反映させてきた日本人。そうした伝統的な美意識の再認識を誘う企画展「YUKATA」が、9月27日まで「とらや 東京ミッドタウン店ギャラリー」で開催されている。この展示会は、「とらや」と「竺仙」という、和菓子と呉服の老舗のコラボレーションから生まれたもの。創業天保13年(1842年)の竺仙は、「浴衣は竺仙」といわれるほど、江戸の粋を表現した美しい柄の浴衣が多くの人々に愛され続けてきた。

着物も和菓子も、日本の四季を細やかに表現するという美意識は相通ずる。会場では、浴衣の柄と和菓子に共通する18種類の意匠を展示。竺仙の生地と、とらやの大正時代の菓子見本帳が、桜や紫陽花、菊、紅葉といった四季折々のモチーフごとに並べられ、日本人の繊細な感性を改めて浮かび上がらせた。
「浴衣を着るのは夏なのに、四季が反映されているのは矛盾があると感じられるかもしれませんが、暑い時期に秋冬のモチーフを取り入れることで“涼味”が感じられる。着る人だけではなく、見る人がどう感じるかを気遣う感覚は、日本人ならではのデリケートさの現れだと思います」と、竺仙の五代目当主・小川文男さんはいう。

浴衣と和菓子に共通する、季節感という日本らしさ

制作工程も知ってもらえればという思いから、会場では竺仙の代表的な染めの技法である「注染」の工程を道具とともに展示。明治時代に考案されたもので、一日に何十枚もの布を染めることで量産が可能になり、浴衣が庶民に広まるきっかけになった画期的な技法だ。さらに、色とりどりの浴衣の反物を展示しつつ、袷・単衣・薄物といった季節ごとの装いの変化についても紹介している。
「昔はいま以上に日本の四季がはっきりしていて、季節に合わせて衣食住すべてを細やかに変えていました。現在は季節感が薄まりがちだといわれますが、この展示を通して、四季を感じる暮らしの豊かさをお伝えできたらうれしいです」

浴衣と和菓子に共通する、季節感という日本らしさ