【若き担い手たち】「東京洋傘」の魅力と可能性を引き出す、小宮商店のブランドマネージャーの挑戦【若き担い手たち】「東京洋傘」の魅力と可能性を引き出す、小宮商店のブランドマネージャーの挑戦

【若き担い手たち】「東京洋傘」の魅力と可能性を引き出す、小宮商店のブランドマネージャーの挑戦

職人の手仕事によって生まれる東京洋傘をより多くの人に知ってもらい、その魅力を広めていきたい――。1930年(昭和5年)創業、東京都指定の伝統工芸品である東京洋傘の製造・卸売を行う小宮商店で、現在ブランディングや商品企画、ウェブサイトやSNS、ECサイト業務を担当する田川沙也香さんに、仕事のやりがいや新たな挑戦についてうかがいました。

【若き担い手たち】「東京洋傘」の魅力と可能性を引き出す、小宮商店のブランドマネージャーの挑戦
最近は店頭に立つことは減ったものの、販売スタッフから聞くお客様の声は励みになると語るブランドマネージャーの田川沙也香さん(写真中央)。


「前職は百貨店で婦人服販売の仕事をしていました。現在の小宮宏之社長に声をかけてもらったのがきっかけで2014年に入社したのですが、大学時代にデザインを学んでいたこともあり、販売だけでなく、商品企画やECサイトの運営など幅広い業務に携われることに魅力を感じたのです」

入社してすぐ田川さんが手がけた仕事は、現在の東日本橋ショップの店舗開発でした。当時、店というより倉庫として使われていた場所を店舗(ショップ)にしてほしいと小宮社長から依頼された田川さんは、什器の再考やレイアウトの変更を進めたそうです。百貨店勤務時代の経験を生かし、限られた予算の中でギフト用ラッピングやショップバッグなども新たに取り入れました。

【若き担い手たち】「東京洋傘」の魅力と可能性を引き出す、小宮商店のブランドマネージャーの挑戦
現在店頭では傘の持ち手となるパーツを選んで、その場でつけてもらえるサービスも行われています。


【若き担い手たち】「東京洋傘」の魅力と可能性を引き出す、小宮商店のブランドマネージャーの挑戦
どんな傘のサイズにも対応できるギフト用ボックス。ショップバッグは紙ではなくコットン素材で特別感があります。


店舗開発と並行し、新たにSNSアカウントを立ち上げたり、ホームページのリニューアルに取り組んだり、オンラインでの情報発信にも精力的に着手しました。ホームページでは商品紹介だけでなく、職人の技術や商品開発に込めた想いなどを発信する読み物コンテンツも新設。現在、日本で販売されている洋傘のシェアの99%を海外製が占めていますが、田川さんは職人による手作りの東京洋傘の魅力をもっと伝えていきたいと力を込めます。

小宮商店の東京洋傘は、傘を開く際に上に押し上げるロクロと呼ばれる部分を、手を傷めないように生地で覆う「ロクロ巻き」や、傘の骨が生地にあたるダボと呼ばれる部分を生地で保護する「ダボ巻き」といった工程が取り入れられています。

「海外製や大量生産された傘にはない工程で、使う人に対する心遣いや、愛着を持って使ってほしいという、職人の想いや細やかな技術を感じることができます。こうした小宮商店ならではのものづくりの叡智や美しさを、世の中に伝えていきたいです」

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小宮商店のホームページの「読みもの」コーナー。傘づくりのことからメンテナンス、傘にまつわる絵本の紹介など、傘に愛着をもてるようなテーマの記事のほか、店舗がある東日本橋周辺のイベントや老舗の情報も発信。ユーザーに寄り添った情報発信は、田川さんの発案によるもの。


ショップの売り上げは右肩上がりに伸び、現在では会社全体を支えるほどの規模に成長しました。2024年には自社ECもオープンし、それまでは外部のECモールが中心だったオンライン販売でも、自社ECの売り上げが大きく拡大し、会社の業績にも貢献しました。また、現在では商品企画も田川さんが中心に行い、小宮商店全体のブランディングを任せられるようになりました。

「入社した当時は20代の若手は私だけで、社員や職人の方々は年上ばかり。私が進めたことに対してネガティブな反応があるかもしれないと不安になったこともあったのですが、社長をはじめ皆さんが背中を押してくれて様々なことを任せてくれました。年齢や立場を超えて意見を言い合える社風に加え、職人さんたちが作り上げる傘の素晴らしさを直接知っている社員だからこそ、新しいことを受け入れて挑戦する道を応援してくれたのだと思います」

田川さんが企画した雨晴兼用傘「Bouquet-ブーケ-」は、表は無地ながら、傘を広げると、内側にミモザをイメージした花柄が現れるデザイン。

「小宮商店の傘は贈り物として選んでいただくことも多いので、ギフト需要を狙った商品として企画しました。ほぐし織の魅力を生かした花束のような傘というアイデアを、職人さんとコミュニケーションを取りながら作りました」

ネームバンドを傘の表にも取り付けることによって、長傘のように持てる2WAY仕様になっており、機能性も抜群。付属の傘袋にもこだわり、傘を入れリボンを結ぶと花束のように見える商品です。

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「Bouquet-ブーケ-」各¥33,000(税込)。「自分のアイデアが形になり、会社の成長にも繋がることを実感して嬉しく感じる」と田川さん。


小宮商店は、田川さん入社当初は男性中心の組織でしたが、現在は社員数が倍以上に増え、女性が半数を占めるまでになったのだそうです。
経営企画室長・伊藤裕子さんを中心に、田川さんも利用した育児・介護休業規則やテレワーク制度など働く環境も整えられ、次世代を担う人材が集うようになったという小宮商店。多様な力が交わりながら、自由な発想を歓迎できるものづくり産業のしなやかな進化に、今後も期待が集まります。

【若き担い手たち】「東京洋傘」の魅力と可能性を引き出す、小宮商店のブランドマネージャーの挑戦
出産に際して同社の育児休暇を取得したという田川さん。現在ではリモートワークなども取り入れ、育児をしながら柔軟に仕事に取り組んでいるそう。




【若き担い手たち】は、東京に代々受け継がれてきた匠の技術やノウハウを未来に繋ぐ若き職人やスタッフに焦点を当て、彼らがこの道を選んだきっかけから日々の仕事内容、そして将来への展望を深掘りしていきます。