

浅草に息づく、伝統革工芸の魂
1958年、爬虫類革職人だった初代・前川昭太郎さんが前川商会を創業。二代目の典央さんは鹿革に漆で模様を施す印傳の奥深さと可能性に魅せられたことをきっかけに、事業転換を図った。当時、東京で印傳を扱う職人がほぼいない状況にも関わらず、ゼロから鹿革や漆の仕入れ先を開拓し、2004年に浅草前川印傳としてブランド化した。
浅草前川印傳の魅力は、軽くてしなやかな鹿革の質感と漆が織りなす美しい模様にある。また、使い込むほどに艶が増し、深みのある経年変化が楽しめるのも大きな特徴だ。浅草前川印傳は、初代から受け継ぐ確かな品質を守りながら、この優れた素材を最大限に活かし、現代のライフスタイルに合わせた革新的なデザインやカラーを積極的に追求してきた。
なかでも代表作である「パッチワーク印傳」は、漆の上品な光沢と鹿革の柔らかな質感はそのままに、色とりどりの異なる文様を組み合わせることで、印傳の「地味」「落ち着いた」といった従来のイメージを見事に覆した。そのカラフルな装いは唯一無二の個性を放ち、現在では多くの人々を魅了している。また、古典柄と鮮やかな色使いという斬新な組み合わせのメガネケースや扇子入れも、日常を彩る身近なアイテムとして人気があり、特に海外からの観光客に上質で粋な日本土産として高く評価されている。
既成概念に捉われない自由な発想で、印傳の新たな魅力を開花させた浅草前川印傳。伝統的な漆付け技法を守り、熟練の職人技でひとつひとつ丁寧に製品を作り続けた結果、2003年には浅草に初の直営店を開業。現在は2店舗を展開するまでに成長を遂げた。
三代目の前川来人さんは「今後は皮革袋物だけでなく、生活の中に印傳を取り入れる暮らしを提案していきたい」と語り、テーブルクロスなどのインテリア製品の開発にも意欲を見せる。同時に、この貴重な技術を継承する若手職人の育成にも力を入れ、浅草から100年先も残る伝統的な革工芸として、次世代へつなげていくことを目指している。

