佃煮からTSUKUDANIへ、国内外に魅力を発信
佃煮の発祥は、江戸時代初期。隅田川河口にある佃島の地に住む漁民が、江戸前で獲れた小魚を煮て食べていたことが始まりとされている。佃島の名から佃煮と呼ばれるようになった保存食を、人気の江戸土産に進化させたのが、新橋玉木屋の三代目・七兵衛だ。
新橋玉木屋は、越後出身の初代七兵衛が、天明2年(1782年)に現在の新橋で創業。当時は、家伝の「座禅豆」と呼ばれる砂糖と醤油で煮た黒豆が主力商品だった。三代目が佃煮の製法に独自の工夫を重ねて、味・香り・艶の三拍子そろった江戸佃煮を完成させた。新橋玉木屋は座禅豆と佃煮の二枚看板となり、どちらも現在に至るまで愛され続けている。
あみやあさり、マグロ、椎茸など、佃煮のラインアップは多種多様。素材ごとに煮込んだ秘伝のタレを継ぎ足して使用することが、コクと旨味の秘訣だ。細切昆布の佃煮は、1922年に来日したアインシュタインもお気に入りだったという。新橋玉木屋の佃煮は、昔ながらの製法を継承した辛口と、時代の変化に応じた塩分控えめの「白佃煮」シリーズを展開。まろやかな風味が、女性や佃煮を食べ慣れない層にも好評だ。ウェブサイトでの、炊き込みご飯やサラダなど佃煮を使ったレシピ紹介も、新たなファン獲得に一役買っている。
さらに、従来のイメージを覆す新たな商品の開発にも注力。佃煮の技術を使ったソフトタイプのふりかけ「佃煮ふりかけ」や、グリーンカレーやイタリアントマトといった世界の味を楽しめる「世界のふりかけ」シリーズを開発し、本格的な再現度で大ヒット商品となった。海外からの客や肉を食べない人にも好評だという。近年は、世界に佃煮の魅力を発信するべく、ワインとのマリアージュが楽しめる商品も展開。新橋本店の飲食カウンターではワインとともに提供されている洋風オリジナルメニューがあり、その前菜のひとつ、あみの佃煮とバター、レモン汁などを合わせた「あみバター」や、「えび佃煮とナッツのキャラメリゼ」は好評を受けて商品化された。佃煮からTSUKUDANIへ——。江戸時代からの伝統を受け継ぎつつ、新橋玉木屋の商品は進化し続けていく。