藍染工房 壺草苑 (村田染工)

藍染工房 壺草苑 (村田染工)

藍染工房 壺草苑 (村田染工)藍染工房 壺草苑 (村田染工)

古来の藍染へのこだわりが生む、深く艷やかなジャパンブルー

青梅市は、鎌倉時代から続く織物の産地。江戸時代には、藍染の綿糸に1割ほどの絹糸を合わせて織り込む、粋な「青梅嶋」で一世を風靡した。明治時代には途絶えてしまったが、わずかに現存していた青梅嶋の反物に出会い、その再現を果たしたのが、この地で1919年に創業し、タオルや服地などの糸染めに携わってきた村田染工だ。それまでは化学染料を使った綿糸染めを行っていたが、天然の原料のみを使う昔ながらの藍染に原点回帰。1989年に、村田染工の一部門として、藍染専門の工房「壺草苑」を立ち上げた。

壺草苑が採用しているのは、日本の藍染の黄金期である江戸時代を中心に行われていた「天然藍灰汁醗酵建て」という方法。タデアイという植物の葉を乾燥させ、さらに発酵させてつくる「すくも」という藍染の原料を徳島の職人から取り寄せ、工房で灰汁や小麦の表皮などを加えて、かめの中で朝晩かき混ぜながらじっくり発酵させていく。自然発酵でつくる藍の染液は、管理が非常に難しく時間もかかるため、現在は化学薬品を使って短時間で染める方法が主流となっている。だが、天然藍には化学染料では出すことのできない透明感や深みがあり、染めの作業を重ねることで生地が膠(にかわ)成分でコーティングされ、丈夫で色落ちしにくくなる。また、殺菌・抗菌作用やUVカット効果もあるといわれる。こうした魅力があるからこそ、壺草苑では手間ひまかかる昔ながらの染め方を踏襲。美しい絞り染めやグラデーションを生かしたストール、シャツ、ワンピースなどのアパレルコレクションを年2回発表しており、著名ブランドからのオーダーも数多く引き受けている。

明治時代に来日した英国人科学者、ロバート・W・アトキンソンは、日本の藍を「ジャパンブルー」と呼んで賞賛したが、近年は自然界の原料のみを使い、使用後の染料液は良質な肥料になるというエコロジカルな面からも、海外からの注目度は高い。壺草苑の真摯なものづくりは、今後も世界に誇るジャパンブルーを生み出し続けていくはずだ。

藍染工房 壺草苑 (村田染工)藍染工房 壺草苑 (村田染工)