【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

【江戸東京リシンク展】
現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

江戸東京きらりプロジェクトのコンセプトである“Old meets New”。
東京には、江戸、明治、大正、昭和、平成、令和の時代にまで続く、数多くの「老舗」が存在しています。そして、そこにはさまざまな技、文化、伝統が息づいている。そうした東京の魅力を国内外に伝えたいという思いからスタートしたのが本プロジェクトになります。今回、その活動の一環として開催される「江戸東京リシンク展」に、私は、作家としてだけでなく、展覧会ディレクターとしても参画しています。私はこれまで“Rethink”という言葉を冠した展覧会をいくつか開催してきましたが、本プロジェクトのコンセプトである“Old meets New”と“Rethink”という概念は多くの共通点を有していると考えています。“Rethink”が意味するところを簡略化して言うなら、途切れることなく続く日本の伝統、あるいは文化を、現代においてそのまま再現するのではなく、現代的な意味を加えて表現するということです。そのため、私の作品はすべて、日本のこれまでの歴史、文化があってこそ、成立しているとも言えます。その点において、“Old meets New”と“Rethink”は同義であり、だからこそ、これまで数多くの伝統工芸、伝統芸能とコラボレーションする形で、過去と現在をつなぐ活動をしてきたのです。時代は変わっても変わるべきでないもの、時代が変わるからこそ変わるべきものを見極め、伝統を次の100年に残していくために、今、私たちが何をなすべきか。伝統をどう現代的な意味づけをして打ち出していくか。今回の展覧会は、東京の魅力を伝える場であるとともに、私たち自身がリシンクするための機会でもあるのです。

江戸東京きらりプロジェクト 推進委員
江戸東京リシンク展 展覧会ディレクター
現代美術家 舘鼻則孝

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

重要文化財・旧岩崎邸庭園で2024年3月1日から3月10日まで一般公開された「江戸東京リシンク展−旧岩崎邸庭園でみる匠の技と現代アートの融合−」では、江戸東京きらりプロジェクトのモデル事業者と現代美術家・舘鼻則孝氏とのコラボレーション作品が披露されました。このページでは、匠の技を活かしたコラボレーション作品の数々を紹介したいと思います。

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

舘鼻則孝 × 和太鼓 宮本卯之助商店

雷鳴を神仏の来臨に擬えて、雷神の持つ雷鼓を表した作品。玩具太鼓と呼ばれる4.5寸の小さな太鼓を活用して制作された。宮本卯之助商店の職人が制作した太鼓に舘鼻則孝氏のアトリエで彩色を施して完成させた。本作に使用されている太鼓は、皮を張る前、乾燥させる工程で歪んでしまったり、割れてしまったことで、製品にすることが叶わなかった昭和50年代のもの。飾り結びには、龍工房の正絹製の組紐が用いられている。

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

舘鼻則孝 × 東京くみひも 龍工房

本作のために新たに考案された組み方で組まれた正絹製の「角紐」は、表と裏で色が異なる。これは、江戸の粋な美意識とも言える着物の羽裏から着想を得たもので、一見モノトーンに見える作品の差し色として豊かな表情を生んでいる。背面に施された飾り結びは、「吉祥結び」と呼ばれ、良いことが起こる兆しの象徴として古くから扱われてきた。60ミリのピッチで正確に「結び」を入れることで、立体的なテクスチャーを与え、それらが集合することで現れる表情は作品の重要なアクセントとなり、「藤四ツ組」で組まれた丸紐に入った屈曲した差し色のラインが抑揚ある見え方を演出している。

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

舘鼻則孝 × 江戸刷毛 / 東京手植ブラシ 宇野刷毛ブラシ製作所

現代では量産を目的として機械化された工程が多い中、手植えブラシや刷毛を作り続ける宇野刷毛ブラシ製作所。舘鼻則孝氏とのコラボレーションでは、古くから職人に愛用されてきた「左官ブラシ」を絵画作品の仕上げに転用することで新たな作品が誕生した。画面上で左官ブラシを引くことによって生じる、縞状の痕跡を意匠として活かすことを意図した技法研究がなされ、絵画の世界では筆致と呼ばれる筆遣いとして画面に刻まれている。本作に用いられた左官ブラシには、弾力性のある馬の尻尾毛が使われており、最も長いものでは横幅60センチのものも特別に製作された。

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

舘鼻則孝 × 江戸うちわ / 江戸扇子 伊場仙

ひとつの絵の中に一対の要素を内包した《Duality Painting》という、舘鼻則孝氏の絵画シリーズの延長線上の作品として制作された江戸扇子。左右に向いた蛇腹状の面を活かして絵図を表現し、異なったモチーフを1枚の扇子に表している。また、「大満月うちわ」と呼ばれる江戸うちわに描かれた満月の図案は、本作のために描き下ろされた新作。江戸うちわは、1本の竹を裂いて仕立てられており、その緻密な手仕事には扇子同様に工芸的な魅力が詰まっている。

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

舘鼻則孝 × 金唐革紙 金唐紙研究所(特別協力)

本展では、特別協力という形で参画した金唐紙研究所によって制作された金唐革紙を用いて、舘鼻則孝氏が完成させた《Heel-less Shoes》。「金唐革紙」は、江戸時代にヨーロッパから渡ってきた「金唐革」と呼ばれる装飾革を見た日本人が、和紙を使って模したことで生まれた。しかし、明治期以降、海外に輸出されるほどの人気を博したが、次第に需要は減少し、昭和中頃には、製造技術も途絶えてしまったという。本展の会場となった旧岩崎邸庭園の洋館内装にも用いられており、1985年に金唐紙研究所を設立した、国選定保存技術保持者の上田尚氏の尽力によって復元が実現した。

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

舘鼻則孝 × 東京注染 丸久商店

注染と呼ばれる伝統的な染色技法で染め上げられた《Heel-less Shoes》のアウトソールには、舘鼻則孝氏のシグネチャーでもある雷雲の意匠が施されている。作品の背の高さを活かした上下に広がる図案には、注染による特徴的な「ぼかし」が施されており、職人による技法的なこだわりと舘鼻氏による意匠化へのこだわりが重なり合うことで成立している作品。1枚の型紙にもかかわらず、多くの鮮やかな色彩で同時に染色することが可能な技法の特性を活かした内容となっている。

【江戸東京リシンク展】<br>現代美術家・舘鼻則孝の手掛ける匠の技を活かしたコラボレーション作品

舘鼻則孝 × 江戸組子 建松

繊細な組子細工を活かした多様なものづくりを得意とする建松とのコラボレーション作品では、組子細工による伝統的な幾何学文様と舘鼻則孝氏がアクリル絵の具で描く雷雲のモチーフがレイヤーとなって表現されている。「桜亀甲」「変わり麻の葉」「桔梗亀甲」「雪型亀甲」――上から順に並ぶ文様が表現しているのは「春夏秋冬」。それらの中でも麻の葉や桔梗というモチーフには、魔除けの意味があり、舘鼻氏が描く「雷雲」も同様の意味を持つことから、それぞれの文様同士がリンクしている。

Photo by GION