【前編】東京都江戸東京きらりプロジェクト・英国ヴィクトリア&アルバート博物館共催　アートイベント「Masterclass : Tokyo Crafts」を開催

江戸東京きらりプロジェクトの推進委員を務めている現代美術家の舘鼻則孝です。

この度、東京都と英国ヴィクトリア＆アルバート博物館（以下「Ｖ＆Ａ」という。）の共催で開催し、私がプロデュースしたアートイベント「Masterclass: Tokyo Crafts」が10月29日にロンドンで開催されました。その舞台となったV&Aと、江戸東京きらりプロジェクトによる取り組みについて、3回にわたってご紹介したいと思います。

きらりプロジェクトのモデル事業者である「小町紅の伊勢半本店」、「江戸木版画の高橋工房」、「東京くみひもの龍工房」の3事業者と共に渡英した私たちは、数日間の滞在の中で、博物館のギャラリーツアー、アートイベントでのレクチャーやワークショップなど、さまざまな角度から、江戸東京の伝統ある技や老舗の産品といった「東京の宝物」の価値と魅力を発信するとともに、プロジェクトの海外展開についての意見交換を行ってきました。

V&Aの日本美術担当学芸員の山田雅美さんによるギャラリーツアーでは、日本美術コーナーで開催中の特別展示「Beguiling Beni: Safflower Red in Japanese Fashion」を鑑賞しました。展示品の中には、「伊勢半本店」と私がコラボレーションしたヒールレスシューズが展示されています。本作は、「伊勢半本店」が江戸時代から継承し続けてきた玉虫色に発色する紅で染め上げられた特別なモデルで、この特別展示のために収蔵された博物館の新たなコレクションでもあります。

V&Aの世界中から集められたコレクションは、博物館創設の目的でもある「教育」という一貫した視点から収集されています。古代彫刻からアヴァンギャルドファッションまで多岐にわたるコレクションは、1日では鑑賞しきれないほどの膨大なページを有する「芸術の教科書」とも言えるでしょう。

今回共催イベントの開催にあたり、東京都産業労働局根本浩志次長が、Ｖ＆Ａコレクション部門のディレクターを務めるアントニア・ボストロム博士を表敬しました。お二人の対話の中では、江戸東京きらりプロジェクトの紹介、日本の伝統産業の匠の技の魅力や将来性、今後の連携などについて意見交換が行なわれました。

ボストロム博士からは、自身が審査員を務める「ロエベ クラフト プライズ」においても、「日本人作家の活躍は目覚ましいものがあり、現代においても匠の技が継承されていることは素晴らしいことで、日本はクラフトマンシップにおいて世界をリードする立場にある。」と発言がありました。

※ロエベ クラフト プライズは、ロエベ財団（スペインのファッションブランドLOEWEの創業者ファミリーが創設）が「近代のクラフトマンシップにおける卓越性、芸術的価値、新しさ」を称えることを目的に2016年に設立した賞。

Photo by GION
©︎Edo Tokyo Kirari Project and Victoria and Albert Museum, London