
ポータークラシック代表取締役がこだわった訪れたくなる店作り
2026.01.23
FASHION「実店舗を作ることに、すごく心を入れていますね。わざわざポータークラシックに来てくださるお客様に、私たちのボールをしっかり返したいのです」。そう語るのは、2007年にポータークラシックを父の吉田克幸さんと設立し、現在、代表取締役を務める吉田玲雄さん。ポータークラシックの新店舗ポータークラシックシネマは2025年9月、JR山手線高輪ゲートウェイ駅から徒歩1分のニュウマン高輪にオープンしました。

吉田さんは、アメリカのクラシックな映画館をテーマにした店舗を作りました。「高輪のように新しい街だからこそ、普遍的なクラシックが際立ちます。それぞれの土地に合わせた表現があると思います。『クラシック』は決して古いっていう意味ではありません。時代を超えて愛される普遍的な価値をもち、時代がいくら変わっても、昔も今も、20年後も30年後もかっこいい。それがクラシックの定義だと思うんです。かっこいいものは、いつでもかっこいい。気持ちいいものは、どの時代でも気持ちいいんですよね」。
店舗のエントランスに立った瞬間、細部にまでこだわり抜かれた圧倒的なクオリティに驚くはずです。劇場さながらの空間デザインを手がけたのは、国内外で活躍する美術監督の一人、種田陽平さん。種田さんがポータークラシックの店舗を手がけるのは、今回で3店舗目になります。

「種田さんとは、ハリウッド創成期の本物の映画館を目指そうと話しました。嘘を嘘に見せないのが映画美術の本質なんです」。そう吉田さんが話すように、店舗入口で目に飛び込んでくるマーキーライト(電飾看板)にはじまり、チケットブース内部にはリアルに再現されたチケットまでセットされています。俳優のメイクアップテーブルをイメージしたコーナーがあるなど、細部までリアリティが追求されています。
店内に足を踏み入れると、まず目を奪われるのが大きな映写機です。これは、吉田さんが執筆した自身の小説で映画化もされた『ホノカアボーイ』の舞台となったハワイ島にある小さな街、ホノカアの映画館ホノカア・ピープルズ・シアターで実際に使われていたもの。吉田さんにとって、特別な思いが詰まった映写機です。

実店舗ならではの顧客体験について、吉田さんはこう語ります。「香りがあって、音楽が流れていて…店舗には、まるで映画館に入るときのような高揚感がありますよね。ウェブと違って体感することができます。映画館は、知らない人同士が同じ作品を共有する場所ですが、店舗もそれに通じるものがあると思うんです」。
吉田さんは、店舗が単なる買い物の場ではなく、時間や思いを共有し、記憶に残る体験が生まれる場所となるよう細部までこだわって作り込んでいます。
「私たちはコロナ禍を経験した反動もあって、実店舗の大切さを改めて見直しました。この店には、お客さんの買い物体験をより特別なものにするサプライズを用意しています」。たとえば、試着室兼シアタールームの扉は、デザインも素材の質感もクラシック映画館そのものです。座席が二つあり、試着中も映画を楽しめます。

刺し子、かすり、道着といった日本の伝統的な技術や素材、アイテムに注目し、それをアメリカ、ヨーロッパ、そしてアジアのスタイルと融合させ、使い込むほどに味わいが増す服を展開するポータークラシックの核には、創業者である吉田克幸会長から受け継いでいる価値観があります。それは、「三世代で楽しめるもの」であること、そして、日本の職人を大切にし、その手仕事をいかした「メイド・イン・ジャパン」であることです。
糸、生地、染色、縫製、金具。一着の服に込められた職人の膨大なストーリー。それをお客さんが自分の目で見て、触って、感じ取るのです。吉田さんは、それを体感する重要な場が実店舗の意義であるといいます。オンラインショップが発達し、あらゆる買い物がインターネットで完結できる時代でも、実店舗を必要とする理由がここにあります。
「実際、お客様から『こんな生地は触ったことがありません』と驚かれることがあります。あの感動は、実店舗ならではですよね。鞄、洋服、ジュエリー、それぞれの職人さんにストーリーや手法、哲学があります。店舗では、並んでいる商品に息づく膨大なストーリーを店舗のスタッフが直接お客様と共有できるのです」。
吉田さんは続けます。「ポータークラシックのストーリーの一番大切な理念を理解するためには、共同設立者のひとりである吉田克幸会長の存在が欠かせません。経験と才能と感性を備えている会長とスタッフが接することはすごく重要なことだと思うんです。スタッフの皆さんには、会長と一緒に過ごす時間を大切にしてほしいですね」。吉田さんは、なるべく多くのスタッフが会長と時間を共有できるよう、仕事だけでなく食事の機会などを設けているそうです。
本物を求める姿勢、職人への敬意、そして未来へ受け継がれる普遍性。新しい場所だからこそ、そうした「変わらない価値」がより鮮明に浮かび上がる。ポータークラシックの哲学が、新店舗には息づいています。映画館のように、何度も訪れたくなる体験を。そして、訪れた人の記憶に残るサプライズを。ポータークラシックシネマは、これからもそんな感動を積み重ねていくのでしょう。
