

絢爛たる金唐紙が時を超えて現代に蘇る
明治期、その華麗な装飾で欧米を魅了した「金唐革紙(きんからかわし)」。金唐紙研究所は、その金唐革紙の技術が途絶えたことを憂慮した上田尚さんによって、1985年に設立された。金唐革紙とは、「金唐革」と呼ばれる型押しや彩色を施した装飾革を和紙で模した壁紙のことである。
上田さんは、1983年に始まった重要文化財・旧日本郵船小樽支店の修復事業をきっかけに、わずかに残された文献や資料をもとに、材料や技法、道具を徹底的に研究。幾多の試行錯誤を重ねた結果、独自の技術を加えて「金唐紙」として現代に蘇らせた。
2005年、国選定保存技術保持者に認定された上田さんは、その後も伝統的な文様の金唐紙制作に取り組み、生涯にわたり、全国の重要文化財の修復に尽力した。中でも、ジョサイア・コンドルが設計した旧岩崎邸庭園(東京・湯島)における修復は、上田さんの不朽の功績として高い評価を得ている。
その一方で、上田さんは「金唐紙」の普及を目指し、現代の生活空間に調和する作品づくりに挑み、その魅力を広く伝えてきた。その代表作のひとつが、繊細な純金箔と鮮やかな色彩が融合した額装作品「田園風景(四季)」だ。もともとは東京芸術劇場(池袋)の貴賓室の天井を貼るために作られた金唐紙だが、上田さんはそこに新たな彩色を施すことで、身近な空間で楽しめるアート作品へと生まれ変わらせ、金唐紙の魅力をさらに高めた。
上田さんの逝去後、その優れた技術と金唐紙への深い思いは、晩年の修復作業に共に携わってきた孫の江端茉衣さんに受け継がれ、未来へとつながっている。
「金唐紙の鮮やかな色彩や豊かな凹凸、そして煌めきは、空間や調度品と調和することにより、その完成度が増します。今後は修復に加え、和紙の特性を生かしたインテリア、プロダクトの制作にも注力し、金唐紙のブランドとしての可能性を追求していきたい」と、江端さんは力強く語る。

