舘鼻則孝が魅せる“紅”に秘められた新たな姿。そこには、心に迫る力強いメッセージが感じられる

舘鼻則孝が魅せる“紅”に秘められた新たな姿。そこには、心に迫る力強いメッセージが感じられる

「江戸東京リシンク展」の最大の魅力のひとつが、現代美術家 舘鼻則孝と伝統産業事業者によるコラボレーションだ。今回は現今唯一の紅屋・伊勢半本店との作品を紹介する。まるで“今”と“未来”を映し出したかのようなその姿に、私たちは何を感じ、何を想うのか。

舘鼻則孝が魅せる“紅”に秘められた新たな姿。そこには、心に迫る力強いメッセージが感じられる

易々と出すことが難しいとされていた“玉虫色”にフォーカスを当て、舘鼻氏ならではの作品に昇華された。

歴史的な先入観を超えたことで、“新たな魅力”と“可能性”が未来に証明されたように思う

上質な素材の証として放つ“玉虫色”が発色する原理は、いまだ解明されていない。その魅惑的な輝きを、今作品で舘鼻氏は見事に表現してみせた。「技術的な問題ではなく、化学反応に近いような話なので、組み合わせや素材の取り合わせなど、方程式のように問題を解くような作業だったように思います」。と、制作の裏側を語る。この作品は、新たな紅の可能性を見出すような画期的な取り組みとなったが、それとは別の機微も感じ取れた。人は、新しい何かに挑戦するとき、“不確かなもの”に向けて努力を尽くすことになる。そして、行動した先にしか見出せない物を経験する。今作品がそうであるように、その不確かな未来をマイナスに捉えるか、プラスに捉えるか、考え方次第で結果は大きく変わる。今回紅に見出だした新たな発見こそ、舘鼻氏の“リシンク”に対する強い想いそのものを表しているように感じたのだ。

舘鼻則孝が魅せる“紅”に秘められた新たな姿。そこには、心に迫る力強いメッセージが感じられる
舘鼻則孝が魅せる“紅”に秘められた新たな姿。そこには、心に迫る力強いメッセージが感じられる

舘鼻氏の作品には欠かせない雷雲のモチーフが紅によって表現された。雷には「結界」、雲には「生と死の境界線」といった意味が込められている。

“雷”と“雲”そして紅に秘められたメッセージとは

古くから、赤色は生命を象徴する色とされ、呪術的・祭祀的な意味も持っていた。そのため、紅は魔除けに使用されたり、感染症が大流行した際の平癒への祈りとして、紅摺りのまじない絵「疱瘡絵」に利用されるなど、紅に対する信仰が人々の拠り所になっていた。今作品ではそんなビハインドストーリーが、日本独自の死生観で描かれている。これまでの創作活動の中でも、「赤」は舘鼻氏を象徴するシグネチャーとして用いられ、“結界を表す色”として表現されてきた。さまざまな意味合いを持つ紅、そして赤の色彩は、まさに今作品の大きな見所だ。

迫りくる生と死の境界から、身を守るように強く結界を張っているかのような姿を見て、私は「今起きている社会環境や、現代人が抱える“孤立”という意味での社会的な死について、改めて考えるべきなのではないか?」というような感情が沸き起こった。表現こそ新しいが、紅本来が持つ魅力や価値は、現代の視点から見ても変わらない。ぜひ、それぞれが持つ価値観で今作品が放つメッセージを紐解いて欲しい。


江戸東京リシンク展|舘鼻則孝 × 小町紅 伊勢半本店
https://edotokyorethink.metro.tokyo.lg.jp/collaborator_2.html

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